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BUSINESS LAW JOURNAL カンファレンス 瀧本哲史基調講演録【第二回】 ~法務パーソン、インハウスローヤーはいかなるキャリアを歩むべきか~

2019.12.05
2019年5月14日に日経ホールで開催され「BUSINESS LAW JOURN...

2019514日に日経ホールで開催され「BUSINESS LAW JOURNAL カンファレンス 法務×経営×効率化」。弊社ファウンディングパートナー瀧本哲史の講演録です。今回は、連載二回目となります。なお、講演の臨場感が伝わるよう、できるだけ口語のまま記載しております。昨今、弁護士、法務人材には、組織マネジメント能力がますます求められ、弁護士の転職マーケットや法務人材の転職マーケットにおいても当該能力は採用の決め手になるケースが増加しています。ご自身のキャリアプランを見直す視点でもぜひご一読いただければ幸いです。

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3番目に、ローコストオペレーション型。率直に申しますと、事務所の先生は高いと、社員は安いと、よってこういう簡単な仕事は社員にやらせた方が、単価が低い、というタイプの業務です。こういうのは確かに社内でやりがちなんですけど、長期的には、今回いくつかベンチャーさん来てますけど、AIとかそういうものに代替されていくだろうと、そう考えています。サービスをオペレーション化して効率化して低コストにするということです。

テクノロジーサイクルという考え方がありまして、大体の技術というのは1回すごい盛り上がるんですね。もうみんなが期待している、これで世界が変わるんじゃないか、大変なことになる、と言うんですけど、まあ、大体嘘なんですね。散々盛り上がった後、とてつもない失望が起きて騙されたみたいな感じになります。でも、大きなトレンドというのは、テクノロジーの側に大体行きます。なので、あの技術は嘘だったよねってみんなが思った裏で、その技術を改良し使っている人がその技術で成功するということは良くあります。今ここにiPhoneがあります。iPhoneはアップルの最も成功した製品ですが、その前にこういう大きさで情報を管理できる端末をアップルは前に作っていたんですね。世代的には知らない方も多いと思うんですけれどもニュートンと言うんです。これが全く使い物にならない商品でアップルを倒産に近づける位ひどい商品だったんですが、それでみんなニュートンのような商品はダメだろうと予測を立てたんですが、ネットワークがつながってスピードが速くなって全く違うものとして出てきたわけです。なので、正直今の段階で、リーガルテックというのがすごい使い物になるのかと言うと、分かりません。多分、プロの方が見ると、おもちゃじゃないかと思うこともあることでしょう。しかし、全てのテクノロジーはおもちゃから始まり失望があって、ほっとくとそれが大きくなっていた、ということがよくあります。おもちゃでも一応買っとく、とりあえず意見をインプットしておく、という形でテクノロジーは発達します。

日本は、その手のハイテク論者というのは成功してないんですけれども、そこには理由がありまして、新しいから買うという人はすごくいるんですよ。だから初期ブームは日本ではすごい盛り上がるんです。でもそのあと、これはショボイけど俺の意見を入れればもっと良くなると言って伸ばしていく、ハイテクマーケの世界でビジョナリーと言われるユーザーがほとんどいません。なので、新しいものを新しいから買うのではなく、すぐに実戦投入できるように今の企画はしなきゃいけないんですね。そういう企画でないと大きくなっていかないわけですけど、そういう企画はそうそうないので、大抵のベンチャーは新しいと注目された後、すごい失望されて忘れ去られていくんですね。実は競合優位性を強化するという観点からすると、そういう新しめの技術を自分たちに都合の良いように誘導する、ということをしていくことが実は重要です。

ただですね、全部AIに任せるか、というとかなり疑問なんですね。今AIの導入で仕事を何%がなくなるかっていう調査が流行ってますよね。いろんな機関が研究しています。マッキンゼーのファイナンシャルタイムスもやっていて、そこの面白いところは全ての職業に対して細かくタスクを分解し、どういうタスクがコンピューターで置き換えられて、どういうタスクがコンピューターで置き換えられないのか、という分析をしているんですね。まあ結論から言うと、タスクとしてコンピューターが置き換えるのが一番簡単だろうと言われているのが、ここに書いてある法的文書の作成、法的文書の秩序を整える、意思決定を参考にするために関係する法的資料を調査すること、この3つはコンピューターが非常に得意なものだろうと考えています。逆にコンピューターが絶対できないのはこの前後にある関係当事者との議論とか、利害調整とか、全体のコーディネートとかそういった部分は基本的にコンピューターにさせるのは難しいだろうと言われています。散々仕事がなくなると煽っていても実態はこんなもんです。

ただ、ちょっと冷静に考えると、この3つの作業しか行っていない法務部も結構あるんじゃないでしょうか。実は、若手に安くこういうことをさせるというだけの法務部もまだ少し残ってるんじゃないでしょうか。そういう法務部はこれからもコストをかけることはないでしょうし、消えてくだろうと思っています。実際、どんどんコンピューター化によって作業から戦略化していくというのは他の部門では当たり前のように起きています。例えば経理部門であれば、昔はbean counterなんて呼ばれたものですよね。狭い部屋に入って、細かい数字を管理しているよくわからない人たち、なんて営業部門の人に言われたものですけど、今はそういう仕事はどんどん自動化されています。財務部のヘッドは、CFOという花形ポジションになり、戦略的意思決定支援部門へと変わっていったわけです。人事部門に関しても、先端的な企業は、自社人事はコア人材の戦略的育成というところにフォーカスしています。採用戦略沢山やるとか、評価システム作るとかはある程度テンプレートがあるのでアウトソーシングがしやすいんですね、だからどんどんアウトソーシングしていくわけです。人事部門というのも広い意味で戦略的な部門、経営に近い部分に変わってきています。私は全く同じことが法務部でも起こると考えています。自分たちにできない複雑な文書処理とかをやってくれている便利な人たちだけど、コストはかけたくないよね、というところではなく、企業経営の中核を検討するには、法務の意見を入れなきゃ話にならんだろうというところに変わっていく、法務も戦略的部門に変化していくと考えています。

ではこのようになっていくにはどうするべきでしょうか。

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第三回に続きます。ご期待ください。