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BUSINESS LAW JOURNAL カンファレンス 基調講演録【第三回】 ~法務パーソン、インハウスローヤーはいかなるキャリアを歩むべきか~ 

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2020.02.10
BUSINESS LAW JOURNAL カンファレンス 基調講演録【第三回】 ...

BUSINESS LAW JOURNAL カンファレンス 基調講演録【第三回】 ~法務パーソン、インハウスローヤーはいかなるキャリアを歩むべきか~

2019514日に日経ホールで開催され「BUSINESS LAW JOURNAL カンファレンス 法務×経営×効率化」。弊社ファウンディングパートナー瀧本哲史の講演録です。連載で掲載いたします。今回は、三回目となります。なお、講演の臨場感が伝わるよう、できるだけ口語のまま記載しております。

昨今、弁護士、法務人材には、組織マネジメント能力がますます求められ、弁護士の転職マーケットや法務人材の転職マーケットにおいても当該能力は採用の決め手になるケースが増加しています。ご自身のキャリアプランの見直す視点でもぜひご一読いただければ幸いです。

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私が考えるに、なによりも、自社ビジネスはどの方向に向かっているのか、どういう戦略を採用しようとしているのか、そうするとどういうコアコンピテンスが自社にとって最も重要で、それを社内にどういう風に継続的に蓄積して評価していかなければならないのか、そして、それにどのように法務部は貢献できるのか、という流れで考えていく必要があると思います。これは全部外に出すのではなくて、自社の中に独自のノウハウを作ってそれを守っていくという風にする。ひょっとしたら、業界の契約スタンダードを自社が作ってしまい、それをみんな使っていかなければならないようにして、業界での自社の立場を強めるということかもしれません。あるいは、短期間でベンチャーと提携するためのスキームとかを自社が作り、その時の知財の協力スキームとかも非常に使いやすいものを作り、競合が検討に二週間かかりますというところを、あっという間にドラフトを出し、こっちの方が早いね、大企業とは思えない検討速度だね、と思わせて契約を決めるということかもしれません。それぞれの会社のコアコンピタンスはなにか、何が経営の課題で、何を強化すれば競争力になるのか、それに法務はなにができるのかを考える必要がある、ということですね。そうすると、自然と法務の中で、これはいずれコンピューターに置き換わっていくだろう、これは別に安ければなんでもよいだろう、という消滅させる業務と、これはウチとして営業とやりとりして食らいついて強化していかなければならないだろうという業務に完全に分かれていくだろう、と思います。「いろいろ仕事頼まれてるんであれもこれも全部やります」という法務部ではなく、これはうちがやったとしても究極的にはあまり感謝されないことは捨てていく。競争力になるんじゃないですか、というものを社内に示していくことが必要かと思います。つまり、法務自体が事業部門とかトップマネジメントとか社内会議にも攻めていかなきゃいけないわけです。

今、経産省が新しい法務人材とか、攻める法務とかいろいろ検討していらっしゃいますが、結局あの資料は、法務関係者に焦点を当てていますけど、残念ながら経営者に向けて言っていない、という部分があります。そうすると結局、法務は極めてマイナーで専門的でコストはかかるけど仕方なくやっていること、というイメージになってしまう。そうすると、法務の位置は変わらないです。そのため、実は法務部の問題というのは経営に直結するし、ちょっと間違えると大変なことになりますよということを示していく必要が業界としてもあるわけです。

もともと、歴史的な背景を辿れば、法務というのはギルドだったわけです。階級だったわけです。一定の手続きを経て仲間を作って、国王とか貴族に対して、そういうことやっていると大変なことになりますよ、と脅して、アドバイザーになっていたわけです。同じように、法務業界全体として、マネジメント、或いは日本社会に対して、我々を敵に回すと大変なことになりますよ、また大変なことになりましたね、という見せしめがある程度必要かと思っていて、最近そうした展開とかもありましたけれども、いかに法務機能を適当に運営していると大変なことになるか、ということをもうちょっと知らしめないといけないと思います。結構びっくりする大きな会社でも、法務は関与していないなということを示す事例がありまして、あるメーカーさんがもろ独禁法違反のことを先端事例であるかのように言って、ある経済新聞さんに掲載してしまうという恐ろしいことがありました。僕も、一発で独禁法違反だなと思って、そこに友人がいるんで、電話して、「これやばいですよね」と聞いたら、「はいヤバいです」と。なんでこんなものを新聞に載せたのか全く理解できないと、おっしゃっていました。そのあとどういう顛末になったかわからないんですけど、それが残念ながら、日本を代表する会社の実態なわけです。これは、本当にまずいことなのです。

そうなってくると、自然に法務部変わってきますから、法務部の中の人員というのも、ちょっと冷静に分析しなきゃいけないな、という風になっていきます。今、法務のキャリアシステムとか、人事戦略が、通常の社員の人事システムと違う会社ってどれくらいありますか。多分ほとんどないんじゃないかと思います。弊社では組織コンサルティング業務に加えてエージェント業務もやっているんですけど、いい人の奪い合いになった場合、大体給与水準が合わなくて、日本企業は負ける事例が多い。よくこういうスペックの人が欲しい、なかなか市場にいないんじゃないか、と言われます。実際探してみると、残念ながらそういう人は大体他のとこからも話が来ているわけです。それで、マーケット価格がこれくらいですよ、とお話しすると、いやー、うちの給与体系だと残業とか無理やりつけたとしても絶対行きませんと、回答されるので、だとすると採用できる確率は低くなってしまう。ジョブセキュリティで獲得できるような人じゃないですから、と言うと、実際その通りで、断られてしまいます。だから、そういう稼ぐ人って待遇を良くしなければならないんですね。

一方で、割と給料の安い人を採用する戦略もあると思います。そんなにコストをかけられない業務を安い給料の人で回す、これもありだと思います。ただ一方で問題なのが、法務はプロフェッショナルですから、どんどん付加価値あげていかなきゃならないんですけど、通常のサラリーマン感覚で、給与上がってるけど業務変わらないという人もいるわけですよ。それは、いわゆるコモディティだということだと思います。最近は、45歳以上まとめてリストラみたいなことが起きてますけど、同じことが法務でも起こりうると思います。旧来の人事制度だけで法務人材を扱うことの限界がこれからますます出てくるでしょう。

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第四回に続きます。乞うご期待ください。