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伊藤忠商事&企業法務革新基盤 タイアップ企画記事 「伊藤忠商事 インハウスローヤーの軌跡~大手法律事務所から伊藤忠商事に移籍し見えた世界とは~」後編
伊藤忠商事&企業法務革新基盤 タイアップ企画記事
「伊藤忠商事 インハウスローヤーの軌跡~大手法律事務所から伊藤忠商事に移籍し見えた世界とは~」後編
登壇者紹介
・伊藤忠商事株式会社 弁護士 梅田 将吾
略歴 新63期司法修習修了。修了後、大手法律事務所に入所。ジェネラルコーポレート・ファイナンス・M&Aなど弁護士として多岐に渡る経験を積む。2017年5月に伊藤忠商事法務部に入社。繊維、住生活、情報、金融ビジネス領域担当を経て、現在は食料ビジネス領域におけるリーガル業務に従事。その他にベンチャー企業に対する投資案件等、幅広い企業法務業務に関与。
・企業法務革新基盤株式会社 代表取締役CEO 野村 慧
略歴 2019年2月より現職。瀧本哲史京都大学客員准教授と共同で現職を創業。著名な企業法務系法律事務所及び法務部への弁護士や法務人材のエージェント業務と組織コンサルティング業務を手掛ける。
※本記事は大変好評であった2020年のセミナーを再構成したものです。
インハウスローヤーの裁量と責任
(野村)実際のところ、契約の何割ほどを法務部でやっているイメージなのでしょうか。
(梅田)日常的な契約については、法律事務所に外注するのは1割以下で、9割以上は法務部で行います。例えば、ブランドホルダーと締結する繊維のライセンス契約は、50ページほどの英文契約であることもありますが、通常は法務部のみで確認します。ベンチャー投資における投資契約も、基本的に法務部だけで担当します。一方で金額規模が大きいM&A案件などは、法務DDを含めて法律事務所にお願いします。
(野村)法務部は仕事が受身になりがちなのではというイメージをお持ちの方もいらっしゃるかもしれません。仕事の裁量はどのくらいあるのでしょうか。
(梅田)もちろん受身の仕事もありますが、それだけではありません。「法務部は積極的に行け」と言われています。例えば、先程の独禁法の事例でも、クローズ間際に3ヶ月必要です、となっては困るので案件の初期段階から積極的にアドバイスするようにしています。それを営業の人もわかってくれているので、初期の段階から法務に関する相談が来ることが日常的です。
(野村)責任や裁量が広く重いのですね。
(梅田)入社前は、弁護士に任せきりになることも多いかと思っていたのですが、全くそんなことはありませんでした。弁護士に依頼する案件でも、法務部がいなくていいことはありません。例えば、中国の案件で現地の法律事務所に依頼する場合でも、法律事務所に任せきりになるのではなく、部長からは中国の法律の条文にあたるように言われています。伊藤忠では、扱う範囲が幅広く、同時並行で色々な産業の色々なビジネスの法務に携わります。常に勉強しなければならない環境です。入社してから学ぶことも多いです。例えば、米国の不動産法では登記の制度がありません。代わりに保険でカバーすることになります。法務部における案件の実務担当者は1人か2人のため、責任や裁量が広く重いです。ただ、厳しいがゆえに鍛えられます。
(野村)職務経験書に書くことができる内容は前の法律事務所と比べてどのくらい変わりましたか。
(梅田)法律事務所のときは比較的同じ様な業務が多かったと思います。私の感覚でしかありませんが、今では書ける内容は2倍から3倍程度に増えたように思います。
(野村)あとお聞きしたいこととして、投資先にハンズオンで関わることもあるのでしょうか。
(梅田)投資先の法務部やコンプライアンス部の管理職として勤務するなど、ハンズオンで関わることも多いです。
質疑応答
(野村)ありがとうございました。それではQ&Aのコーナーに移りたいと思います。
―(質問)今後また法律事務所に戻られることは考えていますでしょうか。
(梅田)考えていません。色々な経験を積みたいので、それができるのは現職かと思っています。
―(質問)伊藤忠に入社した場合、修習の後に法務部に配属されると思うのですが、新人研修はあるのでしょうか。
(梅田)あります。ただ、新人研修でしっかり勉強してもらうというよりは、戦力として第一線で活躍してもらうことを期待しています。先輩がマンツーマンで常時指導するわけではなく、ある程度最初から1人前として、OJTで経験を積みながら活躍してもらいます。
一方、海外研修としては、ロースクール留学も可能ですし、中国語やポルトガル語などの語学研修もロースクール留学とは別に用意されています。私は中途で入ったので、語学の研修が羨ましいです。
(野村)留学に行く前に半年語学の留学があるようですが、給料をもらいながら語学研修できるのは羨ましいですね。
(梅田)異常だと思います(笑)。ただ、皆さんコストに見合うパフォーマンスを上げているのだと思っています。
―(質問)総合商社の中途採用は狭き門だと言われていましたが、どうしてなのでしょうか。
(野村)会社がスキルだけを買っていないからだと思います。法律事務所での知識を会社での法務にあてはめるとパフォームするかと言われると、必ずしもそうでないと思います。知識だけならお金を出して買えば良く、中途採用の必要性は小さいです。会社はリーガルを軸にしたビジネスパーソンを欲しているのです。これは様々な法務部長と話した結論ですね。
ローに進学して、司法試験に合格して修習した後に入社したら26歳・27歳での入社になります。新卒でストレートに入っていれば4、5年目の社員にあたりますよね。伊藤忠だとビジネスや語学をそれなりに経験している世代です。これが大手法律事務所で語学をやっているならまだしも、普通の法律事務所を経由して中途で入ってくるとなると大きな差がついていることになります。
(梅田)法律事務所では海外案件は少なく、伊藤忠に入ってからの方が明らかに英語を使っています。今でも私より英語ができる人はいっぱいいます。
(野村)そこがまさに商社に修習直後に入るメリットであり、商社が若手採用に力を入れる理由ですよね。商社の教育トラックに乗ってもらうことで、30代でパフォーマンスするための基礎力は鍛えられますね。
(梅田)ただ、企業法務においてやはりリーガルマインドは重要です。日常で生活していてもなかなかリーガルマインドは育たないですよね。司法修習を終えリーガルマインドを持った状態で我々の教育トラックに乗ってもらうと、非常に良いスキルセットを持てると思います。
(野村)幅広い産業に関わりたい、だとか、英語だけでなく第三外国語までやりたい等の希望のある方にとって総合商社は非常に恵まれた環境ですね。リーガルマインドを持った人材が商社で5年間経験を積んで、もし転職マーケットに出てきたら取り合いになります。
―(質問)1人で裁量を持って取り組めるのでしょうか。
(梅田)広く裁量を持って担当してもらっていると思います。調べる必要があればまずは自分でリサーチして自分なりの結論をもって上長の決裁を取得します。契約書もまずは担当者がやり取りし、締結する段階で上長の確認を取得します。ただ、最初は分からないことも多いと思いますので、やり方等は丁寧に教えてもらえますし、法務部として見解を出すので、決してその人だけの責任とはしません。
(野村)では、最後にそれぞれメッセージを送りたいと思います。私が転職相談を行った経験上、大手法律事務所出身でインハウスへの転職を志向する方々の間で総合商社は非常に人気が高い業種だと感じております。しかし、総合商社は新卒に対して採用活動が活発に行われているのに対し、中途採用では採用のレベルが高くなります。実力だけではなくタイミングも重要となります。
梅田さんが伊藤忠商事に中途で入られたのも2017年頃でしたが、現在は法務部で中途採用の募集をしていません。事務所に行ってからインハウスに行くのが良い、とのキャリア戦略はよく言われますが、伊藤忠ほどハイレベルな会社になるとそれは必ずしも容易ではありません。そのため、ファーストキャリアとして商社を考えるのは実は有効な戦略だと感じています。
(梅田)当社の法務部は忙しいですし、勉強もしなければなりません。ただ、色々なビジネスや法律に関わることができ、広い視野を持つことができます。色々な経験をしたい方にとっては面白い職場だと思います。
2022年6月20日配信時に頂いたご質問とその回答
1.私は語学力に不安があり、現在は英語の再勉強をしています。入社してから英語の勉強をしているという方はいらっしゃいますか。
英語について、入社時の要件は設けておりませんが、入社後は海外出張等の渡航や昇格に一定の語学力を要求される為、自主的に勉強する人も多いです。また、プライベートレッスンから通信講座まで、必要に応じ会社負担で受講できる研修を豊富に取り揃えております。再勉強は是非続けて頂きたいですが、海外旅行すら未経験で入社した社員もいますので、不安に思われる必要はありません。
2.今後、インハウスの需要は伸び続けるのでしょうか(例えば、5年10年という見込み)
伊藤忠商事法務部として毎年司法修習生採用を行っており、法務部員として貴重な戦力と考えており、今後も継続見込みです。
企業法務革新基盤株式会社として、インハウスローヤーのマーケットを見てきた感覚からお答えします。インハウスローヤーの採用ニーズは現在まで右肩上がりであり、多くの企業で採用意欲が旺盛です。需要に対してインハウスを志向する法務人材の供給が追いついていないのが現状です。
3.産休・育休、留学制度、英語のスキルアップの補助について具体的に教えてください。
具体的な福利厚生制度については弊社HPをご確認ください。
福利厚生制度 | ABOUT ITOCHU | ITOCHU RECRUITING
英語スキルアップについては上記1をご確認ください。会社全体の制度として、語学研修(各種言語)があり、法務部独自の制度として、サマースクールや米国ロースクールへの社員派遣も定期的に行っております。また、留学ではありませんが、海外駐在とは別に海外実務研修制度もあります。
産休・育休を経て復帰する法務部員も年々増えており、子育てとの両立を実現しています。
4.インハウスローヤーとして働く中で、この仕事のやりがいを最も感じた出来事は何でしょうか。
社会にニーズのある新しい分野のビジネスについて、初期段階から営業部隊と共に法的問題点を検討し、会社にとって望ましい形で問題点を解決することでビジネスをスタートし、ビジネスが軌道に乗った際には達成感を得ることができます。そのようなビジネスの初期段階からビジネスが軌道に乗るまで継続的に関与できるのはインハウスローヤーとしての醍醐味です。
5.忙しい時期と落ち着いた時期それぞれで、家に帰れる時間はおおよそどれくらいになるのでしょうか。
伊藤忠商事では原則として20時迄しか勤務できないため、忙しい時期でも皆さんそれまでには退社しております。最近では、コアタイムを9時〜15時に設定し、その前後で社員が日々の始業・終業時刻を自由に選択できる「朝型フレックスタイム制度」も導入されました。効率的に働き15時に退社している社員もたくさんおります。
6.以前、インハウスで活動をされている弁護士の方に、「会社での業務内容は弁護士資格のない社員と大差ない」と伺ったことがあったのですが、御社のインハウスの先生方や他社のインハウスの先生方は、弁護士でない社員さんと同じ業務内容を協力して行っていると理解してよろしいでしょうか。
弁護士資格の有無で業務内容が変わることはなく、それぞれが担当部署を割り振られております。もちろん先輩・上司のサポートはありますが、原則として各人が一つの案件を責任をもって担当します。任される案件の規模・種類は個々人の経験値・能力次第ですが、司法修習採用の社員は早い段階から即戦力として様々な案件で活躍することが期待されています。
7.商社では様々な分野を扱えるとのことでしたが、分野の幅が広がるとしても、大手法律事務所と比較して扱える事案の制限はないのでしょうか?(例えば大規模MAや複雑な案件、訴訟案件は外注する結果、企業内部の法務部で扱える案件は比較的規模感の小さいものに限られる、等)
そのようなことはございません。むしろ逆です。案件の法律面については法務部が主導し、必要な場合に限って外部の弁護士に意見を聞くこともあります。弁護士事務所の起用はあくまでも法務部員の業務の補完であり、「外注」して法務部員が関与しない案件は存在しません。
8.伊藤忠商事のインハウスを目指すうえで、今やっておくべきことは何でしょうか
法令動向だけでなく国内外の経済や国際政治情勢(米中やロシア・ウクライナ問題等)、気候変動・脱炭素などESG/SDGsの流れといったトレンドなどについて、世界を相手どる「商社パーソン」「伊藤忠パーソン」をイメージしながら様々なことに興味をもって頂くとよいと思います。
また、具体的な応募にあたっては、今後も伊藤忠商事法務部採用に関する情報をこまめにチェックし、セミナー等には是非積極的な参加をお願いします。選考過程で面接の他に適性検査(C-GAB Plus等)もありますのでご準備ください。
9.現在就職活動中で、ビジネスの当事者として関わりたいと思っているのですが、法律事務所に入所した後、中途採用でインハウスとして採用して頂けるのでしょうか。
伊藤忠商事法務部では法律事務所からの中途採用ではなく司法修習生採用を重視し、力点を置いています。伊藤忠商事のインハウスにご興味のある方は司法修習生採用へご応募下さい。
たくさんのご視聴・ご質問頂き誠にありがとうございます。この他多数質問頂きましたが、特にご関心のありそうな質問に回答させて頂きました。皆様の就職活動の一助になれば幸いです。
伊藤忠商事 法務部 採用担当
また、Business Lawyersにおいても伊藤忠商事法務部のインタビュー記事が掲載されました。伊藤忠商事の法務部について理解をさらに深めることが出来ます。伊藤忠商事の選考への応募を検討されている方は是非ご一読ください。
今後の採用活動について(令和4年司法試験受験者対象)
・次回のタイアップ企画(第二回セミナー)について
第二回セミナー(ライブ配信)は7月下旬に開催予定です。詳細は企業法務革新基盤のHP及びTwitterにて告知いたしますのでご確認ください。
本セミナーは弊社採用選考に対応する上で非常に示唆深い内容を多々含むため、応募を検討されている方は是非ご参加ください。
・採用スケジュールについて
9月6日にエントリー受付を開始し、9月中旬より選考開始予定です。
詳細については、今後伊藤忠商事採用HPに掲載いたしますのでご確認ください。