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法務人材の転職及び弁護士の転職へのコロナ禍による影響前編

REPORTS 2020.05.04

「法務人材の転職及び弁護士の転職へのコロナ禍による影響」と題して、最新のリーガルマーケットの現状についてご報告いたします。本稿は前編となります。

【目次】
1 はじめに~法務人材の転職及び弁護士の転職へのコロナ禍による影響~
2 法律事務所の動静
3 企業法務部の動静
4 弁護士の転職活動の動静
5 法務部所属法務人材の動静
6 おわりに~法務人材の転職及び弁護士の転職へのコロナ禍による影響~

前編は、目次1及び目次2となります。後編で目次3から目次6まで掲載いたします。

1 はじめに~法務人材の転職及び弁護士の転職へのコロナ禍による影響~  

 コロナ禍による法務人材の転職及び弁護士の転職への影響については、採用サイドはもちろん転職者サイドからも多くのご相談をいただいており、関心が高いテーマであることが明らかです。そこで、広く情報発信し今後の組織戦略や個人としてのキャリア戦略構築のご参考になればと考え本稿を進める所存です。

法務人材の転職及び弁護士の転職への影響について、悲観論、楽観論ともに現実的解決につながりません。弊社ではリーガルマーケットにおけるキーマンと日常的に意見交換をしておりますので、非公式に現在の状況について率直なご意見をいただいております。かかるご意見と弊社の保有するマーケットデータを融合のうえ本稿を掲載いたします。なお、本稿で言う法律事務所は、企業法務系法律事務所を指します。弊社は企業法務系法律事務所と企業内法務部をメインクライアントにしているためです。

 本稿のテーマについて、掲載時点の情報を下に執筆しており、掲載後は刻々と変化していくことにご留意ください。

2 法律事務所の動静

 まず、採用活動について述べます。コロナ禍以前より中途採用活動をしている法律事務所のうち採用活動に慎重になった法律事務所は少数にとどまっています。緊急事態宣言前の段階で採用活動をペンディングする法律事務所は、1割未満という状況です。緊急事態宣言後は、若干ペンディングする法律事務所が増加したもののポジションが大きく減少しているわけではありません。法律事務所業界外の方からは危機的状況になっているのではとの見方もあるようですが、現段階では大きな混乱は起きていないようです。そのため、中途採用活動への影響は大きくは出ていないのです。もちろん、今後影響が出てくるでしょうが、プラクティスを広く持つ法律事務所が壊滅的な影響を受けることはないでしょう。あまり知られていませんが、リーマンショックの際にも成長を続けた大手法律事務所はあります。今回も同様のことが起きる可能性は十分あります。ブティック系法律事務所は、他の分野に注力するなどして売上をカバーする事例やdeal案件の減少分を顧問契約の増加でカバーする事例など、戦術変更の動きが加速しています。なお、外部向けにブティック系法律事務所と標榜しつつも、その実はジェネラルに対応できるスキルと顧客基盤を保有している法律事務所も多いのが実態です。

 新人弁護士採用に関しては、本年の司法試験延期のあおりを受け、春から夏にかけて実施予定であった説明会や採用活動を延期する法律事務所も多く様子見状況が続いています。ウェブ等で説明会を実施する法律事務所やウェブで事実上の面接を実施している法律事務所もありますが、少数派にとどまります。もし、このまま本年の司法試験が未実施となった場合には、2021年の司法試験受験者の採用競争は激化すると予想されます。

(関連記事参照:https://lawplatform.co.jp/medianews/2020/04/covid-19/

 次に、法律事務所のマーケティングについてはどうでしょうか?

 緊急事態宣言後、セミナーや会議、会食等を通して新規クライアント開拓がしにくくなっており、十分な顧客基盤を持たない若手弁護士や独立したての法律事務所の苦戦が見受けられます。一方で、ウェビナーを実施するなどマーケティングを工夫する法律事務所が増加しています。平時よりもウェビナーの視聴数が増加している法律事務所も多くあります。ウェビナーの視聴者が将来クライアントになる確率がどの程度になるかは今後の戦略に影響を与える重要な指標になるでしょう。緊急事態宣言後、法律事務所からのメールによるニュースレターが増加しているのも工夫の現れです。ウェビナーに関しては、今後徐々に視聴者に飽きが生じてくると推察されます。その局面でも選ばれるコンテンツを提供し続けられるか、実力やアイデアが求められます。

 それでは、プラクティスへの影響はどうでしょうか?

 すべてのプラクティスで案件数が減少するということはあり得ません。過去の歴史を振り返っても、不景気時に伸びたプラクティスというのは必ずあります。リーマンショックの際も同様でした。ストラクチャードファイナンス、プライベートエクイティ、ファンド関連、MA(特にクロスボーダー案件)等は特に悪影響を受けましたが、事業再生倒産、訴訟、コーポレート、グローバルオファリング等は、上昇もしくは同等のレベルで推移しました。コロナ禍でいかなるプラクティスに悪影響が出るのかは、まだ明確になっておりませんが、現状ではM&A、コンプライアンス研修、IPO支援業務、ベンチャー支援業務等は減少しているとの話が入っています。増加傾向は、やはり事業再生倒産、労務、セキュリティー関連等が顕著です。訴訟紛争案件も増加するものと予想します。

 最後に法律事務所による弁護士の外部放出は起こるのでしょうか? 

 事実上の解雇は、外資系法律事務所ではリーマンショックの際に実施されました。コロナ禍でも欧米の法律事務所ではすでに行われており、その影響は日本オフィスにも影響を与える可能性は十分にあります。日系法律事務所では、業績の悪化が賞与の大幅な減額と新人弁護士採用数の抑制として現れることが多いのが特徴です。大幅に業績が悪化した場合には、プラクティスチームによっては事実上の放出はありえますが、少数にとどまるでしょう。仮に放出されたとしても、過去の事例から考えると転職先は短期で見つかっています。

 続きは「法務人材の転職及び弁護士の転職へのコロナ禍による影響後編」に続きます。
https://lawplatform.co.jp/booksreports/2020/05/post_5/

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