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2024年五大法律事務所の新任パートナー就任に関する統計分析

REPORTS 2024.01.29

新年を迎え、1月5日に、五大法律事務所すべてのパートナー就任人事が公表されました。

パートナーシップは、法律事務所の根幹となる制度であり、パートナーの人数規模・年齢分布・プラクティスエリアの人口分布、性別・国籍のダイバーシティ、といった特徴は、法律事務所経営と密接に関連します。このような観点から、新任されるパートナーとは、過去の採用・リテンションの結果であり、今後5年、10年の法律事務所の方向性を示唆するものと考えられます。そこで、弊社では新任パートナーの人数と特徴の分析を実施いたしました。

本年は、弊社セミナー「2024年五大法律事務所の新任パートナーの分析」を2月8日(木)18時から開催いたします。五大法律事務所の新任パートナーの特徴、その背景にある組織構造・組織の方向性、パートナーに就任する弁護士の特徴及びそれらから示唆されるパートナーに求められる要件について分析を行います。法律事務所の経営に携わるパートナーの方々及び企業内法務部において弁護士採用に携わる方々、五大法律事務所のパートナー人事の動向を考慮した上でご自身のキャリアプランを設計することにご関心のある中堅ないし若手弁護士、司法修習生の方々にとって、経営・キャリア設計におけるヒントとなりうるセミナーでございます。

詳細は以下URLよりご確認ください。
https://lawplatform.co.jp/medianews/2024/01/2024_20242818001900/

各事務所の新任パートナー人数は、西村あさひ法律事務所が21名、森・濱田松本法律事務所が17名、TMI総合法律事務所が15名、長島・大野・常松法律事務所が10名、アンダーソン・毛利・友常法律事務所が5名と、五大法律事務所全体では68名のパートナーが新任されました。直近4年の新任パートナー数の推移を見ると、森・濱田松本は昨年に新任パートナー数を大幅に増加させ、今年もその水準を維持しました。一方で、アンダーソン・毛利・友常は昨年に引き続き新任パートナー数が減少しています。アンダーソン・毛利・友常の新任パートナー数が減少した背景として、今年の新任パートナーのボリュームゾーンである修習期62期から64期において、プロパー採用かつ現在籍者の約8割がすでにパートナーに昇格しており、そもそも新任パートナーの候補者数が少なかったことが考えられます。 これは、2021年、2022年に当該修習期の新任パートナー数を増加させたことが一因とも考えられます。また、長島・大野・常松は毎年新任パートナー数が10名前後で安定的に推移しています。

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新任パートナーにおける女性比率は、森・濱田松本が35.3%、アンダーソン・毛利・友常が20.0%、西村あさひが19.0%、長島・大野・常松が10.0%、TMI総合が6.7%であり、五大法律事務所全体での女性比率は19.1%でした。森・濱田松本は昨年の女性比率は6%(1名)でしたが、今年は6名の女性をパートナーに新任しており、女性比率が大きく伸びました。男女別での修習期平均をみると、男性が62.8期、女性が61.9期となりました。今年多くの女性を新任パートナーに昇格させた森・濱田松本においても、新任パートナーのうち男性の修習期平均が64.1期に対し、女性の修習期平均は62.4期でした。昨年と比較して、女性のパートナー昇格の機会はより確保されるようになりましたが、やはり、男女において昇格のスピードに差が生じているといえます。パートナー昇格の時期は、入所以来の育成システムやライフイベント等、構造的問題の影響が大きく、法律事務所としてはダイバーシティと事務所経営の相互に影響する論点を整理し、意思決定を行う姿勢が求められます。このような取り組みの有無は、本論点の性質上、長期的な結果として現れるのではないかと考えられます。弊社でも継続して情報収集・分析を続けてまいります。

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続いて、各事務所の新任パートナーの修習期分布は以下の通りです。
新任パートナーの修習期に目を向けると、67期が最年少での新任です。昨年の最年少新任パートナーも67期であり、修習期の下限の変化は見られませんでした。森・濱田松本は昨年は66期を中心にパートナーに就任していましたが、今年は63期64期が中心となっています。また、TMI総合では例年通り各期から幅広くパートナーに就任しています。

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続いて、新任パートナーを修習期64期以前と65期以降(対象者は64期以前が44人、65期以降が13人)に分けて分析してみると、若手でパートナーに就任する弁護士の特徴が見えてきます。留学等の海外経験率に着目すると、64期以前では68.2%、65期以降では92.3%であり、海外経験を積んでいる人物が求められているといえます。一方で、出向率をみてみると、64期以前が56.8%、65期以降が46.2%となり、それほど大きな違いは見られませんでした。ただし、キャリアが長いほど出向機会が多くなることを考慮すると、65期以降の数値は高いと判断できます。また、65期以降で海外経験も出向経験もない新任パートナーは1名のみであったことを踏まえると、やはり若手のうちから多くの経験を積んでいる人物がパートナーに昇格しやすいといえます。

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外国弁護士比率をみてみると、西村あさひが33.3%、長島・大野・常松が10.0%、森・濱田松本が17.6%でした。西村あさひでは、7名もの外国弁護士がパートナーに就任しました。西村あさひでは2023年9月から外国法共同事業を開始しており、今回の外国人弁護士のパートナー数増加も合わせて、東南アジアを中心としたグローバル展開により力を入れていることが伺えます。西村あさひではシンガポールオフィスとバンコクオフィスから3名ずつ、東京オフィスから1名、森・濱田松本ではヤンゴンオフィスから1名、バンコクオフィスから2名がパートナーに新任しています。長島・大野・常松では、シンガポールオフィス所属の外国弁護士がパートナーに昇格し、ジャカルタオフィスの代表に就任しています。過去3年間において海外拠点の外国弁護士がパートナーに新任した事務所は、西村あさひ、森・濱田松本、アンダーソン・毛利・友常のみでしたが、今年は長島・大野・常松でも久しぶりに海外拠点の外国弁護士がパートナーに新任しています。海外拠点の強化のため、現地弁護士を重視しているといえます。

五大法律事務所では海外展開が進んでおり、2023年には森・濱田松本がジャカルタとニューヨークに、長島・大野・常松がジャカルタに、西村あさひがクアラルンプールに、そしてTMI総合がパリに拠点を開きました。今後より一層現地の外国弁護士のパートナー就任が増加すると予想されます。

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さらに記事の内容を深堀りするセミナーの詳細は以下になります。

「2024年五大法律事務所の新任パートナーの分析」 (開催日時:2024年2月8日(木)18:00~19:00)

■企画概要:
 本セミナーでは、弊社が例年公表している「五大法律事務所の新任パートナー就任に関する統計分析」を題材に、五大法律事務所の新任パートナーの特徴、その背景にある組織構造・組織の方向性、パートナーに就任する弁護士の特徴及びそれらから示唆されるパートナーに求められる要件について分析を行います。

 法律事務所の経営に携わるパートナーの方々及び企業内法務部において弁護士採用に携わる方々、五大法律事務所のパートナー人事の動向を考慮した上でご自身のキャリアプランを設計することにご関心のある中堅ないし若手弁護士、司法修習生の方々にとって、経営・キャリア設計におけるヒントとなりうるセミナーです。

■登壇者:弊社代表の野村及び、データ分析を担当した倉持による講演形式で実施いたします。
企業法務革新基盤株式会社 代表取締役CEO 野村 慧
略歴:2019年に瀧本哲史京都大学客員准教授と共同で現職を創業。著名な企業法務系法律事務所のパートナーシップの構築、ビジョン設計、改善プラン構築など組織コンサルティング業務に従事。また、大企業の法務部の組織構築・人事戦略などのコンサルティング業務にも従事。さらに、弁護士に関するエージェント業務では多数の実績を持つ。

企業法務革新基盤株式会社 コンサルタント 倉持 勇汰
略歴:筑波大学附属駒場高等学校、東京大学法学部卒業。企業法務革新基盤では、企業法務系法律事務所の機能性向上のための組織改革、企業における法務部門のプレゼンス向上への支援に取り組む。法律事務所、企業法務部の組織改革や制度設計についてのコンサルティング経験を持つ。また、国内法科大学院にてキャリア戦略に関する講演も行う。

■開催日時:2024年2月8日(木) 18:00~19:00

■開催方法:オンライン開催
弊社オフィスを放映会場とし、実施いたします。
※視聴方法は、お申し込み後、後日メールにてご案内させていただきます。

■申込方法:下記フォームからのお申込みが必要です。
https://forms.gle/jYyJUyGJxowiFXHp8

■応募締切:2024年2月8日(木)正午

<本件に関するお問合せ先>
企業法務革新基盤株式会社
03-6860-4689/営業時間:10:00~18:00
e-mail: contact@lawplatform.co.jp

<転職希望もしくはキャリア相談希望の方の登録方法>
以下のURLから登録をお願いいたします。
https://lawplatform.co.jp/agentsearch/form/