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2025年五大法律事務所の新任パートナー就任に関する統計分析

REPORTS 2025.01.16

新年を迎え、1月6日に五大法律事務所すべてのパートナー就任人事が公表されました。

パートナーシップは法律事務所の根幹を成す制度です。パートナーの人数規模や年齢・性別・国籍・プラクティスエリアの分布は法律事務所の経営の意思として現れます。同時に、パートナー就任人事は、それまでの事務所経営の結果でもあります。上記の観点から、弊社では新任パートナーの人数と特徴を分析いたしました。

各事務所の新任パートナー人数は、西村あさひ法律事務所が23名、森・濱田松本法律事務所が18名、TMI総合法律事務所が11名、長島・大野・常松法律事務所が7名、アンダーソン・毛利・友常法律事務所が12名と、五大法律事務所全体では71名のパートナーが新任されました。直近5年の新任パートナー数の推移を見ると、アンダーソン・毛利・友常は一昨年・昨年に新任パートナー数が大きく減少したものの、今年は2021,2022年の水準に戻しています。昨年の減少理由は過去記事(2024年五大法律事務所の新任パートナー就任に関する統計分析 | 企業法務革新基盤)で分析しましたが、今年はアソシエイトが多い66期以降の層を多くパートナーに新任できたことで新任数が増加したものと思われます。また、森・濱田松本は2年前に新任パートナー数を大幅に増加させた後、3年連続でその水準を維持しています。2所が今後も新任パートナー数を維持できるか、注目です。

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各事務所の新任パートナーの修習期分布は以下の通りになりました。
新任パートナーの修習期に目を向けると、68期が最年少での新任です。昨年の修習期を1期更新しました。全体として、各事務所において例年より若い修習期の新任パートナーが増加している傾向にあります。森・濱田松本は昨年64期を中心にパートナーに就任していましたが、今年は67期が中心となっています。2年前は66期を中心にパートナーに就任していたことから、2年前と似た傾向に変わっていることが伺えます。西村あさひは昨年度まで年次が上の修習期に偏った分布でしたが、今年は67期が62期以上と同人数となっています。
五大法律事務所はリーマンショックの影響を受けた64期前後で司法修習終了者採用を大きく減らし、その後司法修習終了者採用を増加させ続けてきました。そのような採用状況が、現在のパートナー就任傾向に影響を与えている可能性があります。今後も、このトレンドが一過性のものか、継続するのか、注視が必要です。

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新任パートナーにおける女性比率は、森・濱田松本が16.7%、アンダーソン・毛利・友常が7.7%、西村あさひが26.1%、長島・大野・常松、TMI総合が0%であり、五大法律事務所全体での女性比率は13.9%でした。西村あさひは毎年安定して20%前後の女性率を維持しています。一方、長島・大野・常松、TMI総合では女性のパートナー昇格者が見られませんでした。西村あさひのみ昨年より女性比率が高まっています。

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また、男女別新任パートナーの修習期分布は以下の通りです。男性の新任パートナーの修習期の平均は65.05、女性は62.38と大きな差があります。昨年の修習期の男女差である1.7と比較して、より差が広がっています。また、最頻値が女性は62期以前であるのに比べて男性は67期と差があります。
法律事務所におけるダイバーシティの確保が重要視されるようになっている中で、女性比率を安定させることは重要な課題の一つです。そのためにも、如何に幅広い修習期から女性パートナーを新任するか、今後注目し続ける必要があるでしょう。

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続いて、出向経験率は以下のようになっており、長島・大野・常松、森・濱田松本、TMI総合では新任パートナーのほとんどが出向を経験していることが分かります。上記3所と他2所の出向経験率に大きな違いがあることは興味深いです。出向経験の有無によるパートナー昇格修習期の差は約1.8であり、やはりパートナー昇格にあたって事務所での経験年数は一定以上求められるものと言えます。

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最後に、外国弁護士比率を見ると、西村あさひが8.7%、アンダーソン・毛利・友常が7.7%、森・濱田松本が5.6%でした。五大事務所全体として、新任パートナーの外国弁護士比率は昨年と比べて減少しました。一方で、森・濱田松本は2024年12月23日付で外国法共同事業を開始しており、五大法律事務所のうち、4所が外国法共同事業を行うことになりました。特に、直近4年間で3所が外国法共同事業を開始しており、五大法律事務所のグローバル化の動きは近年急激に加速していると言えます。具体的な拠点展開としても、2024年は森・濱田松本のサンフランシスコ ベイエリア事務所開設、アンダーソン・毛利・友常のブリュッセル事務所開設、TMI総合のブリュッセル、マレーシア事務所開設があり、2025年に入ってすぐに西村あさひの香港、ブリュッセル事務所開設も発表されました。また、人事面としては、西村あさひで新任パートナーが上海事務所の代表に就任し、TMI総合でリージョナルパートナーを務めていた3名がパートナーに昇格しており、海外拠点重視の姿勢は窺えます。しかしながら、グローバル展開強化のためには、日本国有資格者だけでなく現地外国弁護士の採用・昇格は不可欠であり、外国弁護士のパートナー新任数の推移は注目です。

加えて、今後はグローバル展開が進む中で、国内・海外弁護士を問わず国籍・資格保有国・拠点などより多様な変数に各事務所の戦略が現れてくるものと思われます。企業法務革新基盤では、引き続き詳細に解析してまいります。

アンダーソン・毛利・友常法律事務所. (2025年1月6日). パートナーおよびスペシャル・カウンセル就任のお知らせ. https://www.amt-law.com/news/detail/news_20250106002_ja_001/
TMI総合法律事務所. (2025年1月1日). パートナーおよびカウンセル就任のお知らせ. https://www.tmi.gr.jp/information/2025/16529.html
長島・大野・常松法律事務所. (2025年1月6日). パートナー及びカウンセル就任のお知らせ. https://www.noandt.com/topics/topic20250101/
西村あさひ法律事務所. (2025年1月6日). パートナー就任のお知らせ. https://www.nishimura.com/ja/news/20250106-108991
森・濱田松本法律事務所. (2025年1月6日). パートナーおよびカウンセル就任のお知らせ. https://www.morihamada.com/ja/notices/107626

・本調査は、公表データをもとに企業法務革新基盤株式会社が作成しています。正確性を保つよう合理的な努力をしましたが、調査結果について企業法務革新基盤株式会社として完全性、正確性を保証するものではありません。
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