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法務人材の転職及び弁護士の転職へのコロナ禍による影響後編
「法務人材の転職及び弁護士の転職へのコロナ禍による影響」と題して、最新のリーガルマーケットの現状についてご報告いたします。本稿は後編となります。
前編は以下からご覧ください。
https://lawplatform.co.jp/booksreports/2020/05/post_4/
[目次]
1 はじめに~法務人材の転職及び弁護士の転職へのコロナ禍による影響~
2 法律事務所の動静
3 企業法務部の動静
4 弁護士の転職活動の動静
5 法務部所属法務人材の動静
6 おわりに~法務人材の転職及び弁護士の転職へのコロナ禍による影響~
後編は、目次3 企業法務部の動静からになります。
3 企業法務部の動静
企業法務部の動静についてみていきます。まず、緊急事態宣言前ですが中途求人ポジションはオープンのままではあるものの、選考の進捗が鈍化し始めました。あくまでこの段階では求人数の減少は見られず、求人数を維持しつつも進捗スピードの低下が起きたということです。なお、弊社の企業クライアントが日系大手企業と外資系大手企業と有望ベンチャーが多いことはご留意ください。親しい他社のヘッドハンターにヒアリングしたところ、中小零細企業やベンチャー企業の多くが採用活動自体をストップし始めたのはこの時期だったようです。この時期に採用活動自体をストップし始めた企業は、コロナ禍で相当な影響を受ける可能性があるとの判断をしたものと想定され、逆にこの時期でも採用活動を継続している企業はコロナ禍でも財務状況が安定している、あるいは、業績が悪化をしていないことを示唆するものであるとの解釈が可能です。転職活動する際にコロナ禍でも積極的に採用活動を継続している企業は当面の財務状況としては大きな心配はないと判断して良いでしょう。
ちなみに、例年、2月の予算編成の時期に選考の進捗が鈍化します。予算編成が完了し、3月に入ると面接を実施するスピードが回復していきます。ところが、今年は3月に入っても面接を実施するスピードの回復度合いは例年よりも低調でした。コロナ禍の影響で相対での面接が困難となり採用フローの見直し等の混乱が生じたこと、3月下旬から予測されていた緊急事態宣言に向けて社内の体制を整える業務に時間が費やされていたこと、が影響しました。
では、緊急事態宣言後はどうでしょうか?中途求人をクローズにする企業が出始めています。今後、決算が出てくることでコロナ禍の業績への影響が判明していくと、さらにクローズされるポジションは増えるでしょう。リーマンショックの際にも同様の動きがありました。もっとも、リーマンショック時との違いは、2008年よりもリーガルニーズが企業内で広くかつ深く浸透していることです。国内外のレギュレーションも広域かつ複雑になりました。景気が悪くなったからといってリーガルニーズが大きく減少するとは限りません。それゆえ、リーマンショックの際よりも中途求人数の減少スピードは緩やかになると予想します。
新人弁護士の採用に関しては、法律事務所の動静で述べたことと同様の事態が生じるものと予想します。景気が悪くなったとしても、企業法務部の新人弁護士の採用数については、急激な減少は起きないと予想します。これまでの超売り手市場で新人弁護士の採用が出来なかった企業法務部は多くあり、資金的に余裕がある大企業の法務部は好機とみて積極的に採用活動を行うことが想定されるからです。実際どのように動くべきかのご相談もいただいています。競合の採用プレイヤーが採用マーケットから撤退するのを好機として捉えているのです。また、景気悪化時には新人弁護士のインハウス志向は強まることも影響するからです。
4 弁護士の転職活動の動静
弁護士の転職活動の状況としては、3月の段階でも平常時と比較して大きな変化はありませんでした。実際弊社が担当させていただいた多くの弁護士の方が内定を獲得され受諾されています。転職先として、法律事務所と企業のいずれもあります。変化があった点としては、キャリア戦略の見直しを検討する方が多くなったということです。コロナ禍によるマーケットの変化が大きいため、個人のキャリア戦略にも当然影響がでます。そこで、1からキャリア戦略を構築し直すためにご相談にいらっしゃる方が増加しています。
以下のようなご質問が増えています。
「今後求人数は急減するのではないか?」
「早く転職先を見つけないと長い期間転職の機会がなくなるのではないか?」
「2年後くらいにしか売り手市場での転職機会がないのではないか?そこまで待つと転職適齢期を逃してしまうのではないか?」
「留学を考えていたが、この状況だと留学自体が難しくなる可能性が高い。それなら早く転職して新天地でキャリアを積んだほうが良いか?」
「転職か独立か考えているのだが、今は不適切な時期だと思うか?」
上記ご質問に対して絶対解はありませんが、スキル・プラクティス・年齢・キャリアヴィジョン等からある程度の相対解を算出することは可能です。求人数が減少したからといって、すぐに買い手市場に変化するわけではありません。一旦様子見をする方が通常時よりも増加するからです。買い手市場に変化し始めるのは、いよいよ火の手が自身に迫ってくるフェーズになってからです。従って、景気悪化することが分かっているものの具体的に危機を感じられないというタイミングが一番転職マーケットでは競争相手が少ないということになります。逆張り的発想がここでも重要ということがいえます。もちろん転職先の業績が急激に悪化することも十分ありうるわけですから、リスクが高まる時期であり、この点は留意する必要があります。
5 法務部所属法務人材の動静
法務部所属法務人材の動きは、鈍化の傾向が顕著になりました。弁護士と異なり、無資格者であることが影響しているものと推察されます。「コロナ禍で転職先も厳しい状況になるだろうから、今転職しても仕方ない」と考える方が増加しています。転職を決意されている方の動きは鈍化しませんでしたが、マーケットの状況を一旦見てから転職するか判断しようという方の動きは鈍化したといえます。また、弁護士との違いとして、法律事務所への転職のキャリアパスがないのですから、選択肢が企業一本に絞られることも慎重に判断する傾向を強めるのでしょう。
6 おわりに~法務人材の転職及び弁護士の転職へのコロナ禍による影響~
コロナ禍以降、法律事務所の代表弁護士と意見交換を頻繁に実施していますが、思ったよりも楽観的な意見や多忙を極めているという話が多かったことは意外でした。法律事務所は景気変動に強いのではないかという意見も多く聞かれました。もちろん、コロナ禍の影響は時間差で業界に影響をもたらすでしょうから、コロナ禍の悪影響がどの程度になるか今後注視していきたいと思います。
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