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「法務人材の転職及び弁護士の転職へのコロナ禍による影響続編Vol.8 大手企業法務部部長のコメント中編」

REPORTS 2020.06.07

前編
https://lawplatform.co.jp/booksreports/2020/06/vol8/

 それでは、コメントに入ろう。
「アフターコロナ(あるいはウィズコロナ)における経営環境の変化について、私は、非常にポジティブにとらえています。業種によってはコロナ特需があるとか、新規ビジネスが生まれるという話はありますが、変わらなければならないと声を上げ続けながら、10年はかかるだろうと思っていた変革を新型コロナは1年で変えてくれた、と捉えています。」
 この出だしから、印象的である。コロナ禍による経営環境の変化は、非常にポジティブと表現される。大企業の中で、変わらないことに対する強い課題意識を以前より持たれていたことが伺える。経営環境の変化が、組織の中にある非合理、不合理を炙り出すということを示唆する。苛烈な環境の変化は、人を、組織を変える。変わりたくない人と変わりたい人を炙り出す。出だし一文にそんな法務部長の想いが感じられる。

 10年かかる変革を、1年に変えたというのは、「時間」が外部の環境の変化によって急激に凝縮されたとも捉えられる。コロナ禍によって、向こう1年は10年分が濃縮されていると捉えることができよう。時間が相対性を持つことを示すかのようだ。コロナ禍は、私たちの時間感覚に影響を与えている。リモートワークによりオフィス以外で執務することになり、通勤時間が無くなり、さらに、ランチに向かう移動時間もスタバにコーヒーを買う時間もなくなった。執務時間の区切りはあいまいとなり、プライベートの時間と仕事の時間が交錯しながら時間が流れていく。以前の1日の感覚は、プライベート⇒仕事⇒プライベートと流れ、区切られていた方が多いだろう。しかし、リモートワークが進むと、仕事と隣接してプライベートの時間が並走してくる。私たちの時間感覚に影響を与えている。この感覚から醸成される人々の感性は、別の世界観をもたらすシーズとなり、将来開花していくのだろう。いかなる花を咲かせるかは当職には想像すらつかないが。

「テレワークの推進や時差通勤、法務の分野では契約書締結の電子化などが良い例です。諸外国からの外圧があると変革を迫られる日本。しかし、その変革は国民の意思に沿ったものとは限りません。しかし、今回、直接的な変革のトリガーは新型コロナですが、間接的に国民の声が反映された形になっているように感じます。」ここで、法務部長が指摘する変革のトリガーであるコロナ禍は、我々が予想しえないところから来訪した。変革のトリガーは、常に組織の中にあると思いがちであるが、外部環境の変化も大きい。何かを変えるときには、組織内、当該コミュニティー内だけの動きだけに拘泥せずに、視座を高め、広く視野をとることが重要ということを訴えかけてくるようだ。

 それでは、外部環境の変化が「見えない」段階で、なぜ先に手を打てる組織とそうではない組織があるのだろうか?当職は時間軸の捉え方が大きな影響を与えているのではないかと思う。時間軸を「現在」とのみ置くと、変革の圧力が眼前にやってくるまで、変わろうとしない。時間軸を「過去、現在、未来」と置いて「現在」から解放されると、「過去」の歴史から変化が必須であることを学び、「現在」を自己の利害を超えて捉え、「未来」を推測して現在の連続性のなかでしか捉えられないバイアスを取り除くために、変革を不断に行う必要性に迫られる。当職は、時間軸の捉え方は人間や組織のあり方に深い影響を与えていると考えている。そんなことを当該コメントから考えさせられた。

 少し脱線するが、人間は、学びをどう使うかを試されることにも言及したい。当該執筆を進めているなかで、なぜか想起されたので記載したいと思う。ある人は、英語の学習効果を履歴書に書き込むために使用する、ある人は、英語の学習効果を世界の最新の情報を摂取するために使用する、ある人は、英語の学習効果を世界の次の在り方を模索するために使用する、同じ英語の学習といっても、その目的によって学びと現実の世界との接続点が変わる。目的観がいかに重要かを示す。我々は同じ景色を見ながら別の世界に生きているといってもいいのかも知れない。

 コロナ禍をどう見るか、本連載のコメントも共通性と多様性がある。同じ景色を眺めながら、選ぶ言葉も違い、そして、具現化された思考も違う。言葉の無限の選択肢のなかから、紡ぎだされたその言葉を選択されている。言葉を選び、文を紡ぎだすなかに無数の捨てる作業が存在している。我々は無数の可能性を持ちながらも、可能性を捨てていき、その過去の選択に縛られながら、そして、縛られた自らから解放されるために、さらに挑戦を続けるのだろう。先に時間軸の視点を述べたが、ここでも時間の捉え方が関係してくる。組織を変革する際に必要なことの一つに所属メンバー、特にマネジメント層の時間軸の捉え方が一つの指標になると考えている。「現在」だけを考えるか否かが変革には密接に関連する。太陽の日照時間により、人類の生活スタイルは影響を受け、思考スタイルも変わる。人類は自然環境の変化により、移動しながら発展してきたわけだが、コロナ禍によってワークスタイルの変化、移動の在り方を変えられたという意味で、気候条件等の外的要因から影響を受けることと同じことがコロナによって生じているのかもしれない。

後編は、以下URLからご覧ください。
https://lawplatform.co.jp/booksreports/2020/06/vol8_2/

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