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2023年五大法律事務所の新任パートナー就任に関する統計分析

REPORTS 2023.01.25

2023年1月1日に、五大法律事務所すべてのパートナー就任人事が公表されました。弊社で新任パートナー(他所で既にパートナー経験のある方は除く)の人数と特徴の分析をいたしました。

各事務所の新任パートナー人数は、西村あさひ法律事務所が19名、森・濱田松本法律事務所が18名、TMI総合法律事務所が10名、アンダーソン・毛利・友常法律事務所が9名(別事務所でパートナーを経験した方が1名)、長島・大野・常松法律事務所が8名と、五大法律事務所全体では64名のパートナーが新任されました。昨年と比較すると、森・濱田松本が新任パートナー数を大きく増加させた一方、アンダーソン・毛利・友常は大きく数を減らしました。アンダーソン・毛利・友常は直近3年間、新任パートナー数を増加させていたものの、それ以前の水準に戻した形になります。

五大法律事務所 新任パートナー数.jpg

新任パートナーにおける女性比率は、アンダーソン・毛利・友常が22%西村あさひが16%、長島・大野・常松が12%、TMI総合が10%、森・濱田松本が6%でした。全ての五大法律事務所で女性パートナーが新任されたことになります。西村あさひとアンダーソン・毛利・友常は昨年に引き続き女性を多くパートナーに新任していることが窺えます。

また、アンダーソン・毛利・友常以外では、女性パートナーが新任パートナー全体の修習期平均よりも高い修習期で新任される傾向が見られました。ライフイベント等の影響が一因かもしれません。

今後は、女性弁護士がパートナーに新任されるための取り組みだけでなく、女性弁護士が男性弁護士と同じスピードでパートナーに新任されるための取り組みも求められる可能性があります。

5大法律事務所 パートナーの女性比率.jpg

続いて、各事務所の新任パートナーの修習期分布は以下のとおりです。

新任パートナーの修習期に目を向けると、67期が最年少での新任を果たしています(※68期のパートナーは2名ともキャリアの途中で弁護士登録)。昨年の最年少新任パートナーが65期だったことを踏まえると、五大法律事務所において新任パートナーの修習期の下限が下がっている可能性があります。特に森・濱田松本は66期を中心にパートナーに新任しています。他所よりも若手の弁護士をパートナーに新任したことが今年の人数倍増の一因でしょう。

5大比較図 2023 最新 (2).jpg

パートナーに昇格する修習期の中央値の推移に着目すると、五大法律事務所においてパートナー昇格に掛かる年数が見えてきます。西村あさひが62期と最も高く、次いで長島・大野・常松、TMI総合の63期、アンダーソン・毛利・友常の64期、森・濱田松本の65期となっています。

3年間の推移を見ると、基本的に1年あたり1期のペースで上昇しており、各所内で昇格ペースが維持されていることが分かります。 その中で、森・濱田松本の修習期の推移は特徴的です。森・濱田松本は過去5年間においてパートナー昇格のペースを維持し、昇格人数も10名前後で安定していました。そのため今年の変化は、森・濱田松本のパートナー人事においてなんらかの戦略変更があったとも考えられます。若手をパートナーに積極的に引き上げて組織を活性化させ、以て事務所の事業と人材市場における競争力を高めようとする意志を感じさせる人事です。

このペースでのパートナー新任が基準になれば、森・濱田松本はおおよそ10年でパートナーに昇格するというサイクルになります。 パートナーになるまでに掛かる年数という指標は、事務所に現在所属する弁護士だけでなく、今後入所を考える法科大学院生、法学部生の意思決定にまで影響を与える可能性があります。森・濱田松本の戦略変更を受けて他四所はどのように動くのか、一方で森・濱田松本は今後も同様の人事が続くのか、要注目です。

5大法律事務所新任パートナーの修習期中央値推移.jpg

新任パートナーの外国弁護士率について

外国弁護士のパートナー新任については、長島・大野・常松にて1名新任されたことで、TMI以外の五大法律事務所で過去3年間において1名以上外国弁護士がパートナーに新任されたことになりました。 西村あさひ、森・濱田松本、アンダーソン・毛利・友常は2022~2023年に掛けて続々と海外拠点を開設・提携しており、法律事務所の事業戦略として海外展開の重要性が更に高まっています。

上記環境下において現地人材の採用及びパートナーへの新任は、Inclusion & Diversityの観点からもより一層重要視されるようになるでしょう。 更に、過去三年間における新任パートナーの外国弁護士の所属拠点は東京オフィスの他、タイ(4名)、シンガポール(3名)、ベトナム(3名)でした。海外拠点の外国弁護士をパートナーに新任した事務所は、西村あさひ、森・濱田松本、アンダーソン・毛利・友常と、直近2年で海外展開を進めた事務所と一致しており、この3所の海外展開への志向の強さが窺えます。

5大 外国人比率 (2).jpg

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