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「法務人材の転職及び弁護士の転職へのコロナ禍による影響続編Vol.3 総合商社法務部のコメント中編」

BOOKS 2020.05.24

前編は以下URLからご覧ください
https://lawplatform.co.jp/booksreports/2020/05/vol3

 次に、「ポスト・コロナ或いはウィズ・コロナと言われる今後の世界では、これまでとは異なる社会・経済体制が不可避と言われており、そのことは企業法務の場においても同様であろう」と企業法務が変わることが不可避であることを指摘されている。企業法務が変わることは不可避であるとすると、ではどう変わるのかとの問いが出てくるわけだが、誰にも明確で正確な未来予想はできないだろうが、進まなければならない。そういった時期には、仮説思考で物事を進めていかざるを得ず、当該仮説思考に基づく実行の有無、精度によって大きく将来の法務部の競争力、機能レベルが影響を受けるだろう。不安定のときこそ、仮説思考とその実行力の精度が未来を決めていくものと考える。そうすると、今こそ将来の法務像を再度思考し法務部内で強度の高いディスカッションを行う「とき」なのかもしれない。今回のコロナは組織を大きく変化させる、新しい姿に変えていく、非連続的変革を起こすチャンスと思われる。

 「それは単なる働き方改革やLegalTechAI法務といった次元を超えて」との言及も興味深い。働き方改革、LegalTechAI法務は、リーガル業界で話題のトピックだ。「旧来型企業法務像」を前提として、その業務の効率化を図ることや働き方改革を行うという文脈ではなく、さらに一歩深い次元で、「旧来型企業法務像に対する一種の自律的な破壊と再定義が求められる時代が到来する」と述べてられている。「旧来型企業法務像」+LegalTechAI法務の活用ではなく、「新しい企業法務像」+ LegalTechAI法務という視点で、再定義を行う必要があるのかもしれない。前述したように、この新しい企業法務像とはなにか、ということに対して仮説を構築し実行に移す力が今後の法務部に問われているのだろう。個人にひきつければ、今後の法務を率いる管理職に求められるコンピテンシーと言えよう。

 上記に関連して、当職は、トレンドを追いつつ、トレンドに飲まれないことも重要であることも付言しておきたい。変わるものと変わらないものを峻別する目、右往左往するのではなく、腰を据えてしっかりと本質をつかむ覚悟が大事だと考える。人気が急上昇しているものや新しいものにお金をつぎ込み、最新のトレンドや技術に飛びつくのことが果たして時代を捉えていることになるのか、ふと立ち止まり考えることも重要であろう。なぜなら、流行という変わり続けるものにフォーカスすることになるからだ。変わらないものはなにかを考えることも個人がキャリアを歩むうえで極めて重要な思考であろう。かかる思考は、新しい企業法務像を再定義するために重要な視点と考える。

 「不確実性や不透明性が一層高まるであろう企業活動において、企業法務が求められ又果たすべき機能と責任に自働的な再考」とのコメントも重要な問題提起を含むものだ。分解して整理しておきたい。読者の皆様が所属の組織に、下記の問題提起に当てはめたとき、いかに答えるだろうか。組織のメンバーとディスカッションすることは重要なことだ。私の尊敬するある法務部では、こういった議論が管理職で熱く討議されている。

「社会の不確実性や不透明性が高まるであろう企業活動のなかで、企業法務に求められ又果たすべき機能とはなにか」

「社会の不確実性や不透明性が高まるであろう企業活動のなかで、企業法務が求められ又果たすべき責任とはなにか」

 一つ目の問いは、機能論である。法務部のみならず企業法務系法律事務所でも機能論は組織を変革していく思考フレームである。機能論を整理して定義していくことは、当該機能に照らして具体的判断がいかなる意味をもつかを認知する識別性を提供してくれる。識別性を与えることによって、メンバーを自律的思考へと誘引することになると思われる。

 二つ目の問いは、責任論である。企業法務の責任とはなにか、責任の在り方はどう変わるのか、そして、変わらない点はなにか、日々の業務に忙殺されながらも立ち止まって考えたい。

 「旧来型企業法務像に対する一種の自律的な破壊と再定義」こちらのコメントに当該法務部の誇り・自信・強さを感じる。自律的破壊と再定義を同時に行う強さを持つ。不確実性という現実を受容する覚悟があるものと拝察する。不確実性という現実を受容する人や組織は、自らに対しても同様の不確実性を突き付けるのかもしれない。足下の組織、自己を否定する姿勢を持ちつつ思考し決断を繰り返すのだ。確実性を求めるだけでは、組織の進化も個人の進化も起きないことを肌で知る伝統のある法務部の底力を感じさせるコメントと解する。

 続きは、「法務人材の転職及び弁護士の転職へのコロナ禍による影響続編Vol.3 総合商社法務部のコメント後編」となります。
 https://lawplatform.co.jp/booksreports/2020/05/vol3_2/

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