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「法務人材の転職及び弁護士の転職へのコロナ禍による影響続編Vol.5 日本オラクル株式会社 代表執行役 最高法務責任者 金子忠浩氏のコメント前編」

REPORTS 2020.05.29

 企業法務革新基盤株式会社の代表取締役の野村でございます。弁護士・法務人材の方からご要望いただき、本年5月4日に『法務人材の転職及び弁護士の転職へのコロナ禍による影響』と題した記事を掲載したところ、大きな反響をいただきました。クライアントから送っていただきましたメール・DMの内容を拝見すると、興味深いご意見が多く含まれておりました。具体的には、記事に対してのご感想のみならず、ご自身のリーガルマーケットの見立てや今後の法律事務所/企業内法務の在り方といった非常に示唆に富むものでした。
 
 各種SNS等ではコロナ禍とリーガルマーケットに関するさまざまな意見が発信されておりますが、現在のリーガルマーケットを牽引しているリーダーたちの発信を見ることが難しいのが実態です。一方で、今回のコロナ危機は、司法試験の延期実施が決断されるなどまさに未曽有の事態であり、企業法務人材・弁護士・司法修習生・司法試験受験生としては、キャリア戦略や法務部・法律事務所の在り方について再考を迫られていることと推察されます。このような状況下では、リーガルマーケットを牽引するリーダーたちがいかなる視点で現在のコロナ禍を捉え、いかなる未来を志向しているか知ることは、平時以上に重要であるといえましょう。 
 
 リーガルマーケットのリーダーたちのご意見を共有することは、将来におけるリーガルマーケットの発展に寄与するものと考えます。そこで、当職からリーダーの方々との個人的DM・議論の一部を公開させて頂けないかと打診を致しましたところ、皆様からご快諾を賜りました。皆様におかれましては、心より御礼申し上げます。

 今回のシリーズで連載させて頂きますのは、法律事務所・弁護士・法務管掌役員・企業内法務部の管理職の方からの忌憚のないご意見です。豪華メンバー10名以上が非公式かつ個人的見解として述べるからこそ見えるものがあります。公式のインタビュー記事では見えない世界がそこにはあります。弁護士・法務人材の方はもちろんのこと、企業内法務部を持つすべての経営者の方にとって示唆に富んだ内容であることでしょう。ご期待ください。

 それでは、本日は、日本オラクル株式会社 代表執行役 最高法務責任者 金子忠浩氏のコメントを掲載させていただきます。

「野村様、興味深く拝読しました。多くの法曹関係者の目に触れると嬉しいですね。以下は個人的見解ですが、少し思うところを述べさせていただきます。

 今般のCOVID−19では、組織や個人の「環境」対応の間断なき必要性を、改めて認識した次第です。法曹「進化論」と言って良ければ、クライアントである我々と法律事務所の関係性も、「淘汰」も含めイノベーティブなものになり、更に、「法曹一元」議論が、司法関係だけでなく企業法務や立法政策側も含めて拡大する様に願っています。

 これまでの企業法務側が多くの場合受け手側になっていた状態も変えて行かなくてはならないと、長年この業界?に育ててもらった身としては、発信機会を増やして、多少とも貢献したく思います。」
(日本オラクル株式会社 代表執行役 最高法務責任者 金子忠浩)


(当職野村による解説)
 今回の連載シリーズを通して、役員の方はお二方ご登場いただくことになっている。先に登場いただいたのが金子氏だ。シリーズの後半戦には、双日株式会社 執行役員 守田達也氏に登場いただく。役員のお二方のコメントを比較してみるのも参考になる点が多いだろう。金子氏も守田氏も日本を代表するリーガルマインドと発想力、そして、深い経験を持たれている方だ。当職もお二方とは仕事に限らず多くの議論をさせていただく機会に恵まれた。そのたびに多くのインサイトをいただいた。本稿を通して少しでも伝えることができればと考えている。

 筆を進めよう。まず、金子氏のご経歴についてご説明差し上げたい。金子氏のキャリアは、リーガルマーケットで日々奮闘する皆様、特に経営に近づくのが難しいと感じている方々にとっては参考になるロールモデルだろう。
 
 金子氏のキャリアは、リーガル人材のキャリアの中で最高峰と言っても過言ではない。現株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモの専任の初代法務室長であり、同社の法務部の礎を築かれた方だ。読者の皆様の中には、NTTドコモの「i-mode」を使用されていた方も多いのではないだろうか。「i-mode」とは世界初の携帯電話IP接続サービスである。1999年に発売されるや大ヒットとする。「i-mode」メールは通信料が安く抑えられインターネットメールとして使用できることで、発売と同時に爆発的に普及する。広末涼子をイメージキャラクターに起用したこともヒットに拍車をかける。
 当時の法務室長として、「i-mode」のリリースにむけてリーガル面で獅子奮迅の働きをみせたのが、金子氏なのだ。ビジネスモデル、契約モデルは金子氏が考案し、森総合法律事務所(現森・濱田松本法律事務所)の横山経通弁護士と一行一行作文された。2000年には、「携帯電話会社と通信傍受法」と題する論文を発表されている。「i-mode」を開発した著名な人物として、夏野剛氏(慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科特別招聘教授)を想い浮かべる方も多いだろう。金子氏と夏野氏は盟友である。同じオフィスで共闘していたのである。ちなみに、夏野氏は日本オラクル株式会社社外取締役でもある。お二方の当時を想像するに、「i-mode」を世に出すために身を削って業務に取り組み、仕事を通してロマンを追っていたのではないだろうか。「i-mode」の裏でこうした共働とロマンがあったと思うと心が熱くなる。ビジネスを推し進めるリーガルパーソンの姿がそこにある。リーガルの確かな知見を活用し、大きなムーブメントを作る。ビジネスの醍醐味だ。リーガルというツールを活用し、いかに展開するか、ビックピクチャ―を描き実現に落とし込む。リーガルはビジネスのインフラであることを物語っている。
 
 その後、モトローラ株式会社に法務部長として転身され、外資系企業のリーガルカウンセルとしてのキャリアを歩み始める。同社では、初代法務知財部門長を務めた。そして、2006年に日本オラクル株式会社に転職され初代の執行役 最高法務責任者に就任し、2017年から代表執行役 最高法務責任者を務められている。
 こうしてみると、金子氏のキャリアには、「初」という言葉が付いてまわる。金子氏が所属組織で多くの経営層から支持を得ていたことが推察されるのだ。「初」の試みをするということは、実行する方はもちろん、サポートする側もリスクが伴うなかで、「初」のポジションを任せられるパーソナリティーと高い専門性を兼ね備えていると表現できよう。NTTドコモ時代には、当時社長として「i-mode」開発を推進した大星 公二氏、オラクルでは、Derek H Williamsエグゼクティブ・バイス・プレジデント氏(オラクル本体のエグゼクティブ・バイス・プレジデントと日本オラクルの取締役 執行役社長 最高経営責任者を務めた)が金子氏を後押ししていたという。周囲の良き理解者の存在も見逃せない。

 オラクルはIBM、マイクロソフトと肩を並べる世界的IT企業である。その日本法人である日本オラクルの代表執行役を金子氏が務めていることは、リーガルパーソンにとって励みになるのではないか。日本企業の法務部の位置づけは、近年急速に高まっているもののリーガルキャリアを歩んでも経営層に入れないという声も多い。
 しかし、当職は、そのような日本企業の在り方はいずれ終焉を迎えると考えているし、リーガルパーソンの力がさらに必要とされる時代がやってくると確信する。世界はますます「近く」そして「融合」する時代となるだろう。そんな時代の潮流のなかで企業法務を担う読者の皆様の使命は非常に大きなものがあると強く信じている。当職が瀧本さんと描いた未来でもある。

 続きは、「法務人材の転職及び弁護士の転職へのコロナ禍による影響続編Vol.5 日本オラクル株式会社 代表執行役 最高法務責任者 金子忠浩氏のコメント中編」となります。

中編は、以下URLからご覧ください。
https://lawplatform.co.jp/booksreports/2020/05/vol5_1/

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