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「法務人材の転職及び弁護士の転職へのコロナ禍による影響続編Vol.6 双日株式会社執行役員 法務、広報担当本部長 守田達也氏のコメント後編」

REPORTS 2020.05.31

前編
https://lawplatform.co.jp/booksreports/2020/05/vol6/
中編
https://lawplatform.co.jp/booksreports/2020/05/vol6_1/

「企業側は今回を契機に更なるリモートワークなどの働き方改革を推進しており、ワークライフバランスを利点とした一定の求人層も維持される」とのコメントの解説に移ろう。

 企業法務系法律事務所との比較の視点でワークライフバランスを利点として指摘している。これまでは、リモートワークの体制が整っている法務部は少数であり、制度はあっても実際運用されているところは非常に少なかった。コロナ禍を通してリモートワークがデフォルト化され、今後はリモートワークできない法務部は、転職希望者にとって標準よりもマイナスの評価をされるという時代に突入した。かかる変化は原則論が入れかわったことを意味する。あまりに急激であるが、深く企業法務に従事する方々の心に定着したものと拝察する。

 そのなかで、企業法務系法律事務所も変わることになるだろう。この点も無理だとか、ビジネスモデルによる構造上の改革は難しいという声も一部あるのは事実であるが、必ずしもそうとも言えない。当面企業のほうがワークライフバランスはとりやすく柔軟な働き方ができる優位性を保つことができるだろうが、法律事務所はある程度改善していく動きをするだろうし、企業法務系法律事務所の組織モデルは2020年代が歴史的転換点になると当職は見ている。昨今、ここ数年の超売り手市場により企業法務系法律事務所の人員状況は逼迫しており、人がすべての法律事務所の大きな経営課題となってきた。今後もかかる課題は、大きなイシューとして横たわり続けるだろう。

 そうすると、働き方の改善に着手する動きが出てくるのは当然なのだ。1所が改革の動きを始めると、追従する動きが増え、そして、業界全体のスタンダードに変化していく。読者の方の中には、これから独立して法律事務所の経営を始めようと考えていらっしゃる方もいるだろう。案件の獲得も大変であるが、同様に大変なのが弁護士の採用と定着だ。なにせ新人弁護士として執務を開始した方の50%が5年経過時には1所目を辞めている。このデータは、全国の法律事務所の新人弁護士の動向を弊社独自に調査して算出している。当該数字を前提に組織を構築していくということが本当にできるのだろうかという疑問が生じる。もしこの数字を前提とすると、それはもはや組織ではないのかもしれない。

 しかし、企業法務系法律事務所には、組織の維持発展、海外展開、プラクティスの新規開発など、膨大な挑戦とタスクが今後待ち構えている。それらを乗り超えるためには、いかに優秀な弁護士に残ってもらい、主体者として組織に関与してもらうかということが重要になる。当該課題に真摯に向き合おうとしているパートナーたちを当職は知っている。日本の企業法務系法律事務所は、まだまだ変化する過程にあると確信している。

「一定の求人層を維持、せっかく芽生えたインハウス・企業内法務への熱を冷まさないために」とのコメントは、リーガル業界の将来をどうしていくかという視野の広さを感じる。自社だけのことを意識してのコメントというよりも、リーガルマーケットの近年の進化発展に想いを巡らせ、かかる流れをコロナ禍によって萎ませてはならないという使命感をお持ちと拝察する。若きリーガルパーソンにとって大事な視点ではないかと思う。目的感のない生き方は、人生の後半戦が辛くなる。目的をどこに置くかは、個人のキャリア人生にとっても非常に重要なことだ。目的感が自己に「近く」「狭い」ことはないだろうかと、胸に手をあてて振り返りたい。

「インハウスカウンセル・企業内法務の広報活動には、企業間で一層連携して取り組んでいく必要がある」と指摘している。守田氏は、インハウスカウンセル・企業内法務の広報活動を国内でもトップクラスに取り組んでいる方だ。自社のことだけではなく、リーガル業界全体の発展を目指されている。この点、本連載5回目の登場いただいた日本オラクル 代表執行役 金子氏と共通しているといえよう。かかる視座をお持ち故にかかる立場にあるのか、それとも、立場がそうさせるのか、当職は視座と立場が相互作用しながら螺旋階段上に高まっていくものだと考えている。

「今回のコロナでインハウスカウンセル・企業内法務の業務の裾野は更に広がりを見せつつあります。」との指摘は、弁護士、法務人材ともに励みになるコメントではなかろうか。守田氏の視点から見ると、企業内法務の業務の裾野が広がりはじめているというのだ。「コロナで」というのは、コロナを要因として、と解される。コロナで仕事が減ると考え畏怖する人もいるなか、裾野が広がる予兆が見えるというのだ。企業内の業務が広がるということは、アウトソースされる業務も増えるということを意味する。もちろん時間差があるだろうが。企業法務業務の発生源は企業内だ。常にかかる視点でマーケットを見ていると変化の時こそ、既存のサービスとのギャップが生れていることに気づく。そのギャップこそ新たな課題であり、あらたな課題解決を提供するチャンスの宝庫だ。本を読む側ではなく、本を書く側に立つ発想。新しい切り口、分野で書籍を書くつもりで、ギャップを埋めていく発想や柔軟性をもち、業務に取り組むことが重要ではないかと思う。

「その辺も踏まえて、引き続きインハウスカウンセル・企業内法務の業務内容・やりがいなどを積極的に発信していきたいと思っております。」と結ばれ、さらに企業法務業界の発展を牽引される決意を示された。

第7回は、外資系製薬企業 法務部長からのコメントです。6月3日に掲載予定となります。ご期待ください。

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