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「法務人材の転職及び弁護士の転職へのコロナ禍による影響続編Vol.7 外資系製薬企業 法務部長のコメント中編」

REPORTS 2020.06.03

前編
https://lawplatform.co.jp/booksreports/2020/06/vol7/

それでは、本題のコメントに解説に入ろう。

「貴社作成のレポート『法務人材の転職及び弁護士への転職へのコロナ禍による影響』を拝見しました。法律事務所と企業法務、求人側と求職側など異なった視点からコロナ禍によるリーガルマーケットへの影響を分析し、本質的なインサイトを含むものと思いました。分析の内容はほぼ同意見です。」とのことで、外資系製薬会社の法務部長の視点からのコロナ禍におけるリーガルマーケットは当職の見ている景色と近いようだ。業界や立場によっては、かなり異なる感覚でリーガルマーケットを捉えている方もいらっしゃるだろう。各々の立場によって、影響の受け方は異なるわけであるから当然のことだ。外資系製薬という業界から見たときには、かなり近い姿に見えていることだけは言えるだろう。

 ここで、少しヘルスケア業界のリーガルマーケットについてコメントしておこう。ヘルスケアの業界については、活躍している日本人弁護士の人数は少ない。マーケット規模に対して、従事するリーガルの人数規模が少ないのが特徴だ。これは、法律事務所側でも企業側も同じだ。近年、企業法務系法律事務所はヘルスケアプラクティスの拡大に取り組んでいる。弊社が独占契約している外資系製薬会社のポジションも複数あるが、非常に高い報酬である一方で、リーガルポジションの数が限られている。規制業種である金融業界に比べて圧倒的にポジションの数が少ない。また、外資系製薬企業と日系製薬企業とは、同じ業界のはずだが、報酬がかけ離れているのも特徴だ。ヘルスケアマーケットに参入することは、将来性があると思われる。従事している弁護士数が少ないこと、マーケット規模が大きいこと、R&Dの部分が外部からは情報摂取しがたくインハウスでないと得られない情報が多いこと、等が主な理由だ。

「現在のコロナ禍は「移動」のあり方に大きな影響を与え、旅行業や飲食業などが大打撃を受ける一方、物理的な移動に依存しないオンラインサービス系の事業は追い風が吹き、両者は明暗が分かれています。」と指摘されている。今回のコロナ禍を通して、人類の「移動」という事実がいかに既存のビジネスに影響を与えるかということを説明されている。地球上の「移動」が1ヶ月遮断されることが与える影響は計り知れなかった。当職も当然認知さえしていなかった。世界の「移動」が、世界の「命」「経済」「産業構造」「外交」「紛争」「生活様式」「文化」「宗教」「家族」「教育」等まで因果関係でつながっているということを実感して理解していた方がどれほどいたのだろうか。もちろん、「すべてはつながっている」わけであるから頭では理解できるが、実感することは難しい。

 リーガルリスクも同様だろう。リーガルという社会インフラもリーガルパーソン以外で常時認識している方がどれほどいようか。社会インフラを支えるリーガルパーソンの役割は実に重い。そんなことを、コロナ禍を通して思う。今、当職の手元にロナルド・ドゥウォーキン『法の帝国』(未来社、1995年)がある。冒頭に法とは何かを示している。引用してみよう。

「我々は法の中で生き、法によって生活している。我々は市民であり、被雇用者であり、医師であり、配偶者であり、財産の所有者であるが、このように我々を現にあるような者にたらしめているのは法である。法は剣であると同時に盾であり、また脅威でもある。我々は自分の正当な賃金を主張し、賃貸料の支払いを拒絶することがある一方で、刑罰として罰金刑を科せられたり、投獄されたりする。これらすべてのことは、抽象的で大気のような我々の主権者―すなわち、法―が定めたことの名において行われるのである。そして更に、法の命令や指示を記録したものと想定される法令集が沈黙している場合でも、我々は法の規定が何であるかについて議論する。こうして我々は、はっきりとは聴きとれないほど低い声ではあるが、法が特定の規定を小声でささやいているかのように行動するのである。我々は、法の帝国の臣民であり、法の方法と理念に忠誠を誓った臣下である。そして、このような臣下として我々が何を行うべきかを討議するとき、我々の精神は一つに結ばれる」(以上、引用)

 法とは何かを思考するとき、A氏が指摘する「移動」の替わりに「法」を同じ文脈に差し替えると「法」が現れる。すなわち、「法」が、世界の「命」「経済」「産業構造」「外交」「紛争」「生活様式」「文化」「宗教」「家族」「教育」等まで因果関係でつながっているということを理解できよう。時代の変化のスピードが加速するなかで、「法令集」は現実に追従することが難しくなっていく。「法令集」と現実の間の「空気」をいかに彩るか、それがまさにすべてのリーガルパーソンに共通して課せられた使命ではなかろうか。

後編は、以下URLからご覧ください。
https://lawplatform.co.jp/booksreports/2020/06/vol7_2/

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