前編・中編は、以下URLからご覧ください。
前編　　https://lawplatform.co.jp/booksreports/2020/05/vol3
　
中編　　https://lawplatform.co.jp/booksreports/2020/05/vol3_1

　「個人的には「ガーディアン」か「パートナー」かと言った観念論的な議論ではなく」とのコメントの「ガーディアン」「パートナー」とはなにか。ご存じの方も多いとは思うが、簡単にご紹介差し上げる。経済産業省から公表された「国際競争力強化に向けた 日本企業の法務機能の在り方研究会 報告書」で定義が述べられている。以下引用する

　・ガーディアンとしての機能⇒法的リスク管理の観点から、経営や他部門の意思決定に関与して、事業や業務執行の内容に変更を加え、場合によっては、意思決定を中止・延期させるなどによって、会社の権利や財産、評判などを守る機能。

　・パートナーとしての機能⇒経営や他部門に法的支援を提供することによって、会社の事業や業務執行を適正、円滑、戦略的かつ効率的に実施できるようにする機能。

　「むしろ、日々刻々と変化する現場の課題や問題への適応力や解決力、言わば、足腰の強さと柔軟性が企業法務に再び試される時代が到来すると考えています。」と意見を表明されている。やや脱線するが、足腰の強さという表現は、総合商社の法務部の方との会話でよく出るワードだ。今回コメントいただいた方だけではなく、他の総合商社の法務部の方からも聞いたことがあるくらいだ。足腰という表現から感じられる香りは、総合商社の法務業務を想起させる。

　「その様な変化への対応には外部弁護士等専門家の協力・支援は不可欠ですが、一方で所謂「要件事実論」的な分析・評論を超えた創造的・異次元的なアプローチを具現化・リードすることこそが企業法務の醍醐味であろうとワクワクもしています。」とコメントされ、「要件事実論」的な分析・評論を超えたという表現で総合商社の法務部と法律事務所との違いを示され、「創造的・異次元的なアプローチを具現化・リードすること」が企業内法務部の醍醐味であることを示したものと解される。創造的・異次元的なアプローチという表現には、ダイナミックに変動しさまざまな要因・力学が働く企業活動の意思決定をサポートすることの複雑さを示しているのではないかと推察する。インハウスローヤーを目指す方には、ヒントになるコメントでないかと思われる。

　「今後の新卒・新人弁護士やキャリア法務人材の採用の場面においても、上記の様な視点を持った対応が今後一層重要になると同時に、企業法務側としても、それら法務人材に対して魅力ある成長機会と活躍の場を提供できる自助努力が不可決であろうと考えています。」　　
　当該コメントの前段では、採用する際に重視するポイントが示されているように読める。
　つまり、「「要件事実論」的な分析・評論を超えた創造的・異次元的なアプローチを具現化・リードすること」ができるか、もしくは、できる発想ないし素養があるか、が採用する際に重視する指標になると解されるのだ。さらに、この視点は、法律事務所が企業に提案すべきプロダクトやソリューション方法の開発のヒントにもなるのではないかと思う。

最後に、当該コメントの後段では、「企業法務側としても、それら法務人材に対して魅力ある成長機会と活躍の場を提供できる自助努力が不可決」であることを示され、法務部内外での成長機会と活躍の場を今にも増して提供していく決意を述べられていると拝察する。

　第四回は、AsiaWise法律事務所　久保光太郎代表弁護士からのコメントです。5月26日に掲載予定となります。ご期待ください。

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