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「法務人材の転職及び弁護士の転職へのコロナ禍による影響続編Vol.8 大手企業法務部部長のコメント後編」

REPORTS 2020.06.07

前編
https://lawplatform.co.jp/booksreports/2020/06/vol8/

中編
https://lawplatform.co.jp/booksreports/2020/06/vol8_1/

「法務部の会議もオンライン会議が中心となりました。オフラインコミュニケーションからオンラインコミュニケーションに変わったことで出席者の態度も変わってきました。イシューやそれに対する個人の意見が明確になり、時間内に結論と次へのアクションを確認して終わるようになりました。当たり前のことが当たり前にできるようになりました。」この指摘は、他の方からも同様の意見が出ていた。オフラインよりもオンラインの方が発言しやすい、チャットで意見を伝えやすい、会議に出ているだけでは仕事をしていないと見做される状況になりバリューを示す必要性があると感じる、といった意見だ。

 さらに「これで働き方改革は大きく前進することでしょう。」と言及される。「これで」働き方改革が前進するのはなぜだろうか。上記オンラインコミュニケーションの効用が原因となり、だらだらとした会議がなくなり、イシューが明確となりイシュー解決に取り組む。無駄な会議や無駄な聞き直しがなくなり、タスクが潤滑に進むということを示していると解される。

「法律事務所の変革はどうでしょうか。法律事務所は新型コロナの影響を受けなくて経営にさほど影響はない、ということで安心ということになるのでしょうか。むしろコロナ特需のごとく、新型コロナに伴う紛争解決の依頼が増えてよかったで終わるのでしょうか。私は、むしろ新型コロナによる変革を迫られず、変革できないで終わることを心配すべきかと思います。なぜなら、前述のようにクライアントは変革を迫られているからです。」とのコメントの前段から入ろう。強烈なアジテートだ。既存の在り方に対する批判のニュアンスが含まれる。「安心」、「良かった」で済ますなというメッセージだ。公開情報でこのような意見が表明されることはあまりない、というか、当職は記事等ではほぼ見たことがない。そこに本連載の意義があると考えている。既存のサービスの提供の在り方に対する痛烈な批判が含まれている。後段では、クライアントは変革が求められているにもかかわらず、法律事務所側が変革をしないで済むとしたら、その溝は大きくなってしまうと読める。

「私は、法律事務所にも経営的視点でクライアントサービスを提供する組織づくりが必要であると思います。ワンストップサービスを標榜して肥大化しながらも、結局、クライアントは、大手法律事務所だからというよりも、ある先生の専門性や資質に応じて依頼しています。原因のひとつにはパートナーによるマネジメントができていないからではないでしょうか。組織で仕事をしていない印象です。マネジメントに失敗すると、いずれ若手弁護士も法律事務所を離れていくことでしょうし、そこにクライアントが付いていくことも考えられます。」このコメントは、先に述べたように「個人事業主の集団」としての法律事務所ではなく、「組織」になることが重要だというメッセージと解される。「肥大化」という言葉を用い、「組織」化が進んでいないことを指摘している。たしかに、法務部のレベルが高いほど、法律事務所名ではなくバイネームで仕事を依頼する傾向が強くなる。法務部が未成熟だと法律事務所名で担保を取りにいく傾向がある。この結果、ますます弁護士は組織よりも個人の力を求め、組織のマネジメントへの関心を低下させる。かかる循環を切断する機会として、コロナ禍という外因を活かすべきだと主張されていると解される。

「弁護士の仕事の一部もAIに取って代わられることでしょう。弁護士ひとりが付けられる付加価値は何でしょうか。もしないとしたら、組織で仕事をすることでクライアントサービスを提供するところに付加価値を見出すことを考えてはどうだろうかと思いを巡らしているところです。」最後のコメントも非常に示唆的だ。弁護士ひとりが付けられる付加価値は何かと問い、もしないとしたらと言及する。当該法務部長からすると弁護士ひとりでは付加価値はそれほどない、というニュアンスが伝わってくる。そう感じるのは当職だけではないだろう。それゆえ、これからの時代は、「組織」としてサービスを提供することが発展に必須であることを示している。当該法務部長から見ると、「個人事業主の集団」でのサービス提供の価値を感じにくくなっているということを示しているのだろう。今後の企業法系法律事務所の経営の在り方に一石を投じられ、言葉を結ばれた。

第十回は、東京国際法律事務所 パートナー 山田広毅弁護士からのコメントです。6月11日に掲載予定となります。ご期待ください。

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