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「法務人材の転職及び弁護士の転職へのコロナ禍による影響続編Vol.9 東京国際法律事務所 山田広毅弁護士のコメント前編」

REPORTS 2020.06.11

 企業法務革新基盤株式会社の代表取締役の野村でございます。弁護士・法務人材の方からご要望いただき、本年54日に『法務人材の転職及び弁護士の転職へのコロナ禍による影響』と題した記事を掲載したところ、大きな反響をいただきました。クライアントから送っていただきましたメール・DMの内容を拝見すると、興味深いご意見が多く含まれておりました。具体的には、記事に対してのご感想のみならず、ご自身のリーガルマーケットの見立てや今後の法律事務所/企業内法務の在り方といった非常に示唆に富むものでした。

 各種SNS等ではコロナ禍とリーガルマーケットに関するさまざまな意見が発信されておりますが、現在のリーガルマーケットを牽引しているリーダーたちの発信を見ることが難しいのが実態です。一方で、今回のコロナ危機は、司法試験の延期実施が決断されるなどまさに未曽有の事態であり、企業法務人材・弁護士・司法修習生・司法試験受験生としては、キャリア戦略や法務部・法律事務所の在り方について再考を迫られていることと推察されます。このような状況下では、リーガルマーケットを牽引するリーダーたちがいかなる視点で現在のコロナ禍を捉え、いかなる未来を志向しているか知ることは、平時以上に重要であるといえましょう。 

 リーガルマーケットのリーダーたちのご意見を共有することは、将来におけるリーガルマーケットの発展に寄与するものと考えます。そこで、当職からリーダーの方々との個人的DM・議論の一部を公開させて頂けないかと打診を致しましたところ、皆様からご快諾を賜りました。皆様におかれましては、心より御礼申し上げます。

 今回のシリーズで連載させて頂きますのは、法律事務所・弁護士・法務管掌役員・企業内法務部の管理職の方からの忌憚のないご意見です。豪華メンバー10名以上が非公式かつ個人的見解として述べるからこそ見えるものがあります。公式のインタビュー記事では見えない世界がそこにはあります。弁護士・法務人材の方はもちろんのこと、企業内法務部を持つすべての経営者の方にとって示唆に富んだ内容であることでしょう。ご期待ください。

それでは、本日は東京国際法律事務所 山田広毅弁護士のコメントを掲載させていただきます。なお、あくまで個人の見解であり、所属組織の公式見解ではございません。

「今回のコロナショックがこれまでの各種イベントと異なるのは、世界の主要経済がほぼ同時期に同種の難題に直面したという点にあると思います。そして、その影響は、我々リーガル業界にも等しく及んでいます。

AsiaWise法律事務所の久保先生もコメントされていましたが、コロナショックの大きな副産物は、全世界における急速なオンライン化がもたらす、国境を超えたコミュニケーション・業務の円滑化であると感じています。国境を超えた知的生産を行う我々にとっては、非常にありがたい変化です。このことを好機として活かし、現地弁護士らとの協働関係をより一層深め、当事務所が主戦場とするクロスボーダー戦略法務領域における顧客提供付加価値を高めていきます。

足許では、20194月の設立当初よりインフラのオンライン化を進めていた結果、スムーズにフルリモート態勢に移行することができました。リモート環境下でもチームとしての一体感を保つよう、毎朝定時の全員参加ミーティングや月次の1 on 1ミーティングのオンライン実施など、様々な取り組みを行っています。加えて、テクノロジーを活用した知の共有の仕組みを導入し、既存メンバーによるサービスレベルの押し上げや新たに加わる仲間のオンボーディングの効率化に取り組んでいます。

従来の法律事務所は、本当の意味で強い「チーム」を作ることを苦手としてきたように思います。往年のバルセロナのように、個々の「メンバー」の強さと「チーム」の強さが両立する組織を作ることに今後も挑戦していきます。引き続き、そのための仲間探しを続けていくつもりです。」
(東京国際法律事務所 山田広毅弁護士)

(当職野村による解説)
 今回登場いただく中で最年少の弁護士だ(そうは言っても、弁護士経験は10数年であり、若手ではなく中堅と表現すべきだろう。かつ、59期でここまで活躍している弁護士は少ない)。次回は、久保利英明弁護士に登場いただくが、弁護士実務経験年数の差で言えば、実に36年となる。山田弁護士が本連載をTwitterでつぶやかれていたのを拝見し、本連載開始後に当職からお声がけした。実績十分な大御所が並ぶ中に、発信力があり新しいことに取り組む若き秀英たる弁護士の視点が入ることに意義があると考えた。他にもTwitter等で本連載についてさまざまな弁護士がコメントされておりお声がけをしたかったが、当職の筆力がもたないため(?)(何度朝焼けを眺めただろうか)、別の企画でお声がけさせていただきたいと思う。

 東京国際法律事務所は、2019年4月に設立された創業2年目の企業法務系法律事務所だ。当社も事業開始が2019年2月であり、事業開始時期がかなり近いこともあり創業間もない頃に、鉄板焼き屋で会食させていただいた。なぜ独立したかやこれから何を目指すのか等をお互い語ったように記憶している。その中で当職が感じた山田弁護士の人物評としては、骨太という表現がぴったりくる。語る言葉一つ一つにメッセージ性がある。一貫した想い(骨)から出てくる言霊のようなものを感じた。目指すべき姿が明確で焦点が定まっていた。そんな印象をもった。

 当職が理解した山田弁護士の目指す姿は、簡潔に言うと「クロスボーダーを担う、世界top-tierの法律事務所を自らの手で創る」という大きな目標だ。非常に野心的だ。確かに、クロスボーダー案件について、日系大手企業はクロスボーダー案件となると欧米の法律事務所に発注し、その報酬の多くが欧米の法律事務所に流れているという話はよく耳にする。山田弁護士はその実態を「悔しい」と語っていた。フィーの多くが日本の法律事務所に支払われるようになれば、日本のリーガルマーケットは大きく変容するだろう。また、英米系の法律事務所と比肩する日系法律事務所が数多く生まれれば、マーケットは日本ではなく世界となる。一気にマーケット規模が変わる。その拡大の戦いを現在は西村あさひ法律事務所、森・濱田松本法律事務所等の海外展開を推進する大手渉外系法律事務所が牽引しているわけだが、その動きを牽引する法律事務所群に新たな法律事務所が分け入ることが、日本のリーガルマーケットの発展に不可欠だ。当職は、その中核になる可能性のある山田弁護士のこれからの戦いに注目している。

 日系法律事務所が英米系の法律事務所と比肩する規模になるために問題となるのが、海外展開を支える日本人弁護士の絶対数だ。明らかに輩出人数が少ない。英語が母国語ではない日本人が英米系の法律事務所と肩を並べる闘いをするためには、現在の日本人弁護士の人数で足りるのだろうか。多くの新人弁護士が一般民事を中心とする訴訟弁護士になっていく。企業法務系法律事務所側の発展のために必要な人材の供給が現在の人数で足りるのだろうか。日系法律事務所の海外展開を阻むボトルネックの一つは弁護士の人数だろう。山田弁護士の目指す姿を考えながら、そんなリアルに対する改善策があるのかを思案している。弁護士の人数論で重要なことは、いかなるプラクテイスに人を増やさなければならないかということだろう。プラクテイスごとに充足しているか、不足しているかは、まだら模様になっているのだから。経済規模が常に同一であることはありえず、拡張したり、収縮したり各プラクテイスで繰り返しているし、プラクテイスは新しく生まれてもいる。

 続きは、「法務人材の転職及び弁護士の転職へのコロナ禍による影響続編Vol.9 東京国際法律事務所 山田広毅弁護士のコメント後編」となります。

後編は、以下URLからご覧ください。
https://lawplatform.co.jp/booksreports/2020/06/vol9_1/

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