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「法務人材の転職及び弁護士の転職へのコロナ禍による影響続編Vol.9 東京国際法律事務所 山田広毅弁護士のコメント後編」

REPORTS 2020.06.11

前編

https://lawplatform.co.jp/booksreports/2020/06/vol9/

では、コメントに入ろう。

「今回のコロナショックがこれまでの各種イベントと異なるのは、世界の主要経済がほぼ同時期に同種の難題に直面したという点にあると思います。そして、その影響は、我々リーガル業界にも等しく及んでいます。」と指摘される。山田弁護士のコメントを敷衍すると、世界のリーガルインダストリーに等しく同種の問題が降りかかっているということを意味する。この意味では、今回のコロナ禍はフェアな形でリーガルインダストリーに影響を与えているとも解されよう。かかる影響を受身で捉えるか、主体者として独自の視点で取り組むのか、いかなる態度をとるのかは、各人・各法律事務所に任せられている。そして、その選択の自由度が今回は大きい。環境要因で選択肢が広く取れない事態もあろうが、今回は、広く取れるように感じる。そうだとすると、多様なパスが存在することになる。故に、いかなる態度で臨むかで差が大きく出るタイミングになるだろう。

AsiaWiseの久保先生もコメントされていましたが、コロナショックの大きな副産物は、全世界における急速なオンライン化がもたらす、国境を超えたコミュニケーション・業務の円滑化であると感じています。国境を超えた知的生産を行う我々にとっては、非常にありがたい変化です。このことを好機として活かし、現地弁護士らとの協働関係をより一層深め、当事務所が主戦場とするクロスボーダー戦略法務領域における顧客提供付加価値を高めていきます。」 
 冒頭で、久保弁護士のコメントを指摘されている。詳細は、本連載vol.4をご覧いただきたい。次に、コロナショックの大きな副産物は、国境を超えたコミュニケーション・業務の円滑化である指摘する。オフライン化が進むことで、国の壁の遥か上空を情報や感情や思惑が飛行し行き交う。人と人、組織と組織の相互の距離が急速に縮んでいく。「円滑」という表現が示すように、地球が円としてつながり、滑らかにつながる。さらに、クロスボーダー戦略法務のサービス提供に必要な要素として、海外の現地弁護士との協働を指摘する。
 なぜ協働関係が、急速なオンライン化が進むことにより、もたらされるのであろうか。コロナ前から海外の現地弁護士らと協働関係を構築しテレビ会議や電話やメール等を通して協働していたのではないかと疑問に思わないだろうか。テレビ会議等は、遠距離で会えない状況下で使用していた側面がある。すぐに会えるなら相対で話をすることが通常だろう。しかし、コロナ禍によって距離の遠近とは関係なく、近くに居ようが居まいがいずれでもテレビ会議を使用することになったわけである。そうなると、テレビ会議をしたときに遠くにいるという感覚は薄れていく。テレビ会議=遠くにいる というバイアスが急速に溶けていく。そうなると、海外の法律事務所との会議と隣のビルに入居する提携法律事務所との会議の間の感覚に差はなくなっていくのだろう。心理的バイアスが除かれることで、距離とは関係なくクロスボーダーでの連携協働関係を的確に構築できる法律事務所はさらに伸長するのだろう。ここでも組織化がキーになろう。クロスボーダーでいかにチームを編成するか、その巧拙は将来の法律事務所の成長と相関関係があるものと予想される。

「足許では、20194月の設立当初よりインフラのオンライン化を進めていた結果、スムーズにフルリモート態勢に移行することができました。リモート環境下でもチームとしての一体感を保つよう、毎朝定時の全員参加ミーティングや月次の1 on 1ミーティングのオンライン実施など、様々な取り組みを行っています。加えて、テクノロジーを活用した知の共有の仕組みを導入し、既存メンバーによるサービスレベルの押し上げや新たに加わる仲間のオンボーディングの効率化に取り組んでいます。」
 まず、設立当初からインフラのオンライン化を進めていたとコメントされている。新しい法律事務所の在り方は既存の法律事務所の在り方に縛られる必要はない。新しさにおける脆弱性もある一方で、歴史があるからこそ足取りが重く、変化が進まないケースもある。創業により、既存のモデルから切り離すことは、新しい法律事務所の強みとなる。しかし、この強みもそのまま放置していると、徐々に新しい動きによって色褪せていくことになる。ここに組織化していくことの難しさがある。組織化するということは、ある形に規定していくことを意味する。規定するということは、固定化することを含意する。私たちは、「組織は柔軟であるべきだ」と言ったりするが、組織化するということは柔軟性を低下させることを意味する。そのかわりに、判断と業務のパターンがシンプル化され複雑性を低減し、習熟の効果によって組織の効率性が高まり生産性を高める。つまり、「組織は柔軟であるべきだ」という主張は、実は理想的であるが、現実的ではないのだ。匙加減をどうするか実に難しい問題だ。

「従来の法律事務所は、本当の意味で強い「チーム」を作ることを苦手としてきたように思います。往年のバルセロナのように、個々の「メンバー」の強さと「チーム」の強さが両立する組織を作ることに今後も挑戦していきます。」従来の法律事務所を「チーム」を作ることを苦手としてきたと指摘する。本連載vol8の主要な論点であった組織化という点と同様の趣旨のコメントだ。総合法律事務所の場合、所属する弁護士の専門分野は異なり、サッカーに例えるならゴールがそもそも違うのだという反駁も考えられる。プラクテイスを超えた共通目標を設定するとしたら、それはプラクテイスのサービスの融合ではなく、所内の一体感の問題であり、クライアントから見た時の組織化されたサービス提供になるのだろうか。この問いに対する明確な解がまだ当職には見えない。本連載vol.8のコメントによる組織化の問題提起に多くの方からリアクションがあった。その通りだと考える向きがある一方で、法律事務所における組織化されたサービスの提供というのは、いかに具現化されるのか、難しい問題だというコメントもいただいた。これから必ず歴史は変わり、リーガルインダストリーの有り様が大きく変わるはずだ。山田弁護士はその解を模索し新しいモデルを構築されると信じている。

第十回は、日比谷パーク法律事務所 久保利英明代表弁護士からのコメントです。6月3週目を目安に掲載予定となります。ご期待ください。

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