Books & Reports

書籍とリポートについて

「法務人材の転職及び弁護士の転職へのコロナ禍による影響続編Vol.10 日比谷パーク法律事務所 久保利英明弁護士のコメント 1/5」

REPORTS 2020.06.19

 企業法務革新基盤株式会社の代表取締役の野村でございます。弁護士・法務人材の方からご要望いただき、本年54日に『法務人材の転職及び弁護士の転職へのコロナ禍による影響』と題した記事を掲載したところ、大きな反響をいただきました。クライアントから送っていただきましたメール・DMの内容を拝見すると、興味深いご意見が多く含まれておりました。具体的には、記事に対してのご感想のみならず、ご自身のリーガルマーケットの見立てや今後の法律事務所/企業内法務の在り方といった非常に示唆に富むものでした。

 各種SNS等ではコロナ禍とリーガルマーケットに関するさまざまな意見が発信されておりますが、現在のリーガルマーケットを牽引しているリーダーたちの発信を見ることが難しいのが実態です。一方で、今回のコロナ危機は、司法試験の延期実施が決断されるなどまさに未曽有の事態であり、企業法務人材・弁護士・司法修習生・司法試験受験生としては、キャリア戦略や法務部・法律事務所の在り方について再考を迫られていることと推察されます。このような状況下では、リーガルマーケットを牽引するリーダーたちがいかなる視点で現在のコロナ禍を捉え、いかなる未来を志向しているか知ることは、平時以上に重要であるといえましょう。 

 リーガルマーケットのリーダーたちのご意見を共有することは、将来におけるリーガルマーケットの発展に寄与するものと考えます。そこで、当職からリーダーの方々との個人的DM・議論の一部を公開させて頂けないかと打診を致しましたところ、皆様からご快諾を賜りました。皆様におかれましては、心より御礼申し上げます。

 今回のシリーズで連載させて頂きますのは、法律事務所・弁護士・法務管掌役員・企業内法務部の管理職の方からの忌憚のないご意見です。豪華メンバー10名以上が非公式かつ個人的見解として述べるからこそ見えるものがあります。公式のインタビュー記事では見えない世界がそこにはあります。弁護士・法務人材の方はもちろんのこと、企業内法務部を持つすべての経営者の方にとって示唆に富んだ内容であることでしょう。ご期待ください。

 それでは、本日は、日比谷パーク法律事務所 久保利英明弁護士のコメントを掲載させていただきます。なお、あくまで個人の見解であり、所属組織の公式見解ではございません。

「野村さん
 配信ありがとうございました。拝読しました。御説に大きな違和感はありませんでした。

 顧客基盤のしっかりしている中堅以上の法律事務所は、景気変動にもかなり堪えられると思います。なんと言っても必要な資本が少ないし、家賃と人件費以外の、原材料とも言うべき変動費が少ないので、固定費さえまかなえれば、事務所の収益はそれほど下振れしません。安定した顧問先を有し、紛争案件でも契約案件でも、売り上げ維持ができるかどうかが、ポイントです。

 顧客基盤のしっかりしない若手と、寄せ集まりで顧客層を確立していない水ぶくれした法律事務所はコロナ禍で既存の顧客層を失うかもしれません。

 平時にも言えることですが、新規分野を開拓し、顧客獲得に注力している事務所はコロナだからと言って大ダメージを受けることはありません。

 貴重な知見をお教え頂きありがとうございました。

 今後とも引き続き宜しくお願いします。もし司法試験が中止となると、一挙に新人獲得は難しくなりますね。」
(日比谷パーク法律事務所 久保利英明)

(当職野村による解説)
 今回は日本で一番有名な弁護士と言っても過言ではない久保利弁護士にご登場いただいた。ご存知ないとするとリーガル業界の潜りと言えるだろう。実は、本連載を開始しようと考えたのは、久保利弁護士からの上記メールを契機とする。当方から久保利弁護士に記事を送信させていただくと、すぐにご返信があった。それが上記コメントだ。厳しい内容も含むが、久保利弁護士の半世紀にわたる弁護士としての経験、発想、視点等が短いながらも含まれており、当方だけに留めておくことは勿体ないと感じた。特に、次世代を担う若手弁護士の方々にとっては、多くの学びがあるだろうと感じた。かように考え、本連載を企画した次第である。

 コメントに入る前に久保利弁護士との関係について少し触れさせていただきたい。実は、ファウンディングパートナー瀧本さんからも久保利弁護士と交流があったことを生前伺っていた。ある日、久保利弁護士から瀧本さん宛に著作の感想を記した書簡が届いたというのだ。読者の皆様がご存知のとおり総会屋対策で総会屋を排除された実績など豪快な人物としてメディアに登場されているイメージがあるが、豪快な一面の他に、配慮の人という一面を強く感じさせるエピソードだ。弊社の開業初日9時に、久保利弁護士から激励のショートメッセージとともに胡蝶蘭が届いた。開業の希望と不安の交錯する門出の日に届いた最初の贈り物だった。今でもその記憶は薄れていない。胸を熱くし、背中を押される想いだった。ゼロから会社や事務所を立ち上げた方は経験されていると思うが、事業開始日はさまざまな感情が交錯する。今まで深く付き合っていたクライアントが新会社になり発注していただける保証などどこにもないが、新しい旅路に胸を躍らせながらオフィスに向かう。さあ、やろうと思ったところに、激励のメッセージだ。痺れた。この場を借りて感謝申し上げたい。

 久保利弁護士とは、たびたびご一緒してきた。久保利弁護士が札幌弁護士主催の討論会に登壇される際には、討論の際のサポートとしてお声がけいただき同行し札幌に赴いた。その夜は札幌でジンギスカンをご一緒しホテルに戻り、久保利弁護士の部屋で深夜まで一献したこともあった。弊社事業開始から数ヶ月経過した際には多数の弁護士を呼んでいただき開業祝いの宴を催していただいた。その際には温かい激励のお言葉を頂戴したのを記憶している。また、法務省の幹部の方々との意見交換・情報交換の場にも、毎年のようにお声掛けいただき、統計的観点からリーガルマーケットに関する発言をする機会も与えていただいた。先日も、久保利弁護士が主催されているロー未来の会の講演会にて、リーガルマーケットに関して講演した。そういったなかで会話をさせていただていると、さまざまな学びがある。特に印象に残っている言葉がある。「私の信念は、be justiceだ」という言葉だ。弁護士の仕事の醍醐味を示している。「be justice」という信念を持ち、自らの良心に基づき活動できる。それが経済活動にもつながっている。ビジネスの営みと「be justice」が一体化して生き様として軌を一にする。そのような生き方ができる方がどれほどいようか。しかし、同じ人間であり、読者の皆様が弁護士であれば同じ弁護士だ。後輩たちに75歳になっても、活力みなぎる率先垂範の姿を示す。久保利弁護士は、弁護士の職業的魅力を背中で示している。エネルギー全開で生きる人は、徐々にエネルギーが枯れていくのではなく、さらにエネルギーが溢れてくるようだ。怖がらず、自分に遠慮せずに、ストッパーを外してエネルギーを爆発させて生きようと思わざるを得ない。

 本連載vol6の中で引用した瀧本さんの「正しいことを着実にやれば必ず成功できる。小手先でやらない。深い思考と高い志に基づき仕事をするということだ。小手先でやる偽物が多い。」というコメントと「be justice」という信念に共通性を感じるのは当職だけではないだろう。深夜、本原稿をドラフトしながら当職にとっての「be justice」の在り方を思案している。自らの小人物さを恥じざるを得ない。実に贅沢な時間だ。弁護士として大成されている久保利弁護士の動作、発言一つ一つに学びがある。スケールが違うというのがすぐに分かる。一言で表現すると傑物だ。当職は森・濱田松本法律事務所の現所属弁護士、OBとのお付き合いが多い。そんななかで、久保利弁護士について、若い時から発想力・着眼点・行動力・新しい業務分野の開拓・事務所経営センス等が卓越していたと聞く。優秀と卓越は異なる。優秀の延長線上には、卓越はない。

 続きは、「法務人材の転職及び弁護士の転職へのコロナ禍による影響続編Vol.10 日比谷パーク法律事務所 代表パートナー 久保利英明氏のコメント 2/5」となります。
 本稿は、本日から5日間連続で掲載していく予定です。ご期待ください。

2/5は、以下URLからご覧ください(620日夜からリンクが有効となります)

https://lawplatform.co.jp/booksreports/2020/06/vol1025/

=====================================
<本件に関するお問合せ先>
企業法務革新基盤株式会社
03-6860-4689
/営業時間:10:0018:00
e-mail:
contact@lawplatform.co.jp

<転職希望もしくはキャリア相談希望の方の登録方法>
以下のURLから登録をお願いいたします。
https://lawplatform.co.jp/agentsearch/form/

<最近の記事>
「法務人材の転職及び弁護士の転職へのコロナ禍による影響続編Vol.9 東京国際法律事務所 山田広毅弁護士のコメント前編」
https://lawplatform.co.jp/booksreports/2020/06/vol9/

「法務人材の転職及び弁護士の転職へのコロナ禍による影響続編Vol.8 大手企業法務部部長のコメント前編」https://lawplatform.co.jp/booksreports/2020/06/vol8/

「【速報】令和2年司法試験の合格発表等の日程発表と司法修習生採用に対する影響について」https://lawplatform.co.jp/medianews/2020/06/post_9/

「法務人材の転職及び弁護士の転職へのコロナ禍による影響続編Vol.7 外資系製薬企業 法務部長のコメント前編」
https://lawplatform.co.jp/booksreports/2020/06/vol7/

「【掲載報告】弊社のプレスリリースがメディア45社に掲載されました。」https://lawplatform.co.jp/medianews/2020/05/45/

弊社代表取締役CEO野村慧が、大手渉外法律事務所の所内研修にて講演https://lawplatform.co.jp/medianews/2020/01/ceo/

2019年 総合商社への転職者に関するご報告 市場占有率約30
https://lawplatform.co.jp/medianews/2019/12/2019/

<弊社事業のご案内>
For Legal Profession
・エージェントサービス(弁護士・法務人材) 
・顧問型キャリアデザイン
https://lawplatform.co.jp/ourservice/legalprofession/#agentsearch

For Company and Law Firm
・エージェントサービス
・エグゼクティブサーチサービス
・コンサルティングサービス
・リーガルマーケットリサーチコンサルティング
https://lawplatform.co.jp/ourservice/forcompanylawfirm/