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「法務人材の転職及び弁護士の転職へのコロナ禍による影響続編Vol.10 日比谷パーク法律事務所 久保利英明弁護士のコメント 2/5」

REPORTS 2020.06.20

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https://lawplatform.co.jp/booksreports/2020/06/vol1015/

 久保利弁護士は、森綜合法律事務所(現森・濱田松本法律事務所の源流たる法律事務所)でキャリアをスタートした。同事務所は、森良作弁護士、福田浩弁護士、古曳正夫弁護士、本林徹弁護士で1970年に発足される。その翌年、森綜合法律事務所の第一号のアソシエイトとして入所したのが久保利弁護士であった。一人目の採用が久保利弁護士とは、凄まじい眼力だ。4名のパートナーの慧眼に感嘆せざるを得ない。久保利弁護士から始まる強烈な個性を採用し輩出し続けた森綜合法律事務所の系譜に驚くばかりだ。「森動物園」と言われるほど強烈な個性を擁していた。採用は難しい。特に創業当初の1人目の採用で失敗すると、組織の成長は大幅に阻害される。瀧本さんが創業時に当職にアドバイスしたことも、まさに採用のリスクだった。追悼文にも記載した言葉を引用する。

「創業時の経営者の最大のリスクはなにかわかりますか?採用です。」
「経営者は孤独です。とくに創業時はメンバーが少ないため、人を増やしたくなる。そこに大きなリスクが潜伏している。本来の採用の意味を離れて、経営者は孤独から逃げようと採用に走ろうとするのです。派手にやる必要はない。派手に見せてつぶれるベンチャーはいっぱいある。」である。
 
 いかなるヴィジョンがあろうとも、採用が真の意味で機能しなければ組織は停滞する。組織が成長するには、採用がいかに重要かを示唆している。当職も採用・組織作りの真のパートナーになれるよう研鑽を積まなければならないと改めて思わざるを得ない。それほど、森綜合法律事務所の採用1人目が久保利弁護士であるということにインパクトがある。

 少し脱線するがコロナ禍の中でオフィスの在り方についてさまざまな動きがあるため、オフィスの立地に触れておきたい。森綜合法律事務所の前身は森法律事務所であり、戦後直後の1950年に丸ビルにオフィスを構えた。そして、森・濱田松本法律事務所は、現在も丸の内にオフィスを構えている。久保利弁護士が率いる日比谷パーク法律事務所も丸の内に近接した場所に居を構えている。丸の内には、現在長島・大野・常松法律事務所、岩田合同法律事務所など日本のリーガルの歴史を彩ってきた名門事務所が居を構える。丸の内というのは、日本の法律事務所の歴史を支えてきた、そして、これからも支える場所だ。奇縁により弊社も20207月1日に丸ビルに本社を移転する。現在オフィスの工事を進めている。なぜ丸の内を選んだのか、理由は7月の移転に関する御挨拶文にて公開させていただきたいと思う。

 久保利弁護士の活躍領域は広すぎてここで描き切ることができないが、少し書いてみたいと思う。活動領域に関する記載は、『破天荒弁護士クボリ伝』(2017年、日経BP社)(以下、久保利伝という)を基本の参考資料としつつ当職の独自の調査内容も含めて書き進めていくこととする。久保利伝は、久保利弁護士の業績や考え方を知るために不可欠な書籍だ。ぜひお手にとっていただきたいと思う。

 久保利伝の「はじめに」にエッセンスが詰まっている。引用してみよう。

「弁護士歴47年を総括すると、知財でもエンタメでも総会屋でも敵対的買収防衛でも、私の役割は魁として先陣を切ることだった。ヤクザや暴力団・総会屋が占拠していた世界に入り込み、彼らと対決しながら、業界を弁護士が担う分野に変えてきた。弁護士だから「説得」が武器で、それで駄目なら「闘争」だ。 
 私が第一に心がけてきたことは、正義のための弁護士であることだ」(ここまで引用)

 今でこそ知財分野を支援する弁護士は増加してきたが(それでも非常に少数と言えよう)、なんと久保利弁護士は、40年以上前から知的財産分野に関わる。エンターテインメント弁護士の草分けだ。吉田拓郎、井上陽水、南こうせつ、小室哲哉、矢沢永吉、ユーミン、松山千春等の知的財産権を扱った。40年以上前にこの分野を切り開いたことに驚かざるを得ない。知的財産分野については、今でも新しい分野としての響きがあるのが実態だ。そのため若手弁護士が志向する分野である。

 当時の芸能界は反社会的勢力の仕切る世界であり、そこに切り込んでいったのである。常人の為せる技ではない。2004年には、エンターテインメント・ロイヤーズ・ネットワークを設立し、理事長に就任。日本での知財立国の機運が高まるなか、コンテンツ文化の振興とエンターテインメント産業の発展に貢献する等の目的のため設立された。現在もNPO法人エンターテインメント・ロイヤーズ・ネットワークとして継続されている。前述に久保利弁護士の人物評として、着想力と行動力と述べたが、すべての活動からそう感じさせる。

 そして、総会屋対策での活躍がある。この活躍がもっとも有名であろう。当時の日本企業と総会屋の癒着ぶりの酷さを久保利伝では以下のように記述している

 「かつて日本企業は、ピーク時に1000億円のカネを総会屋に渡していたほど、総会屋との癒着がひどかった。私は、1982年の改正商法施行を機に「株主総会から総会屋を締め出す」と訴え、会社主導型とネーミングした総会屋対策を企画・実行した。」(ここまで引用)

 ビジネスローの世界を通して、正義を実現するという意味を深く感じざるを得ない。かくも人間の目的観というのは重要であることを示す。久保利弁護士は、正義を貫くことを目的として、ビジネスローを手段としてフル活用し、社会を変革してきたわけだ。そのことによって、どれだけの人の生活を、日本企業の経営を、救っているのだろうか。総会屋に流れていた1000億円を切断する一大ムーブメントを起こしたわけだ。法律家が目的を高く定め覚悟を決めて社会と対峙するとき、これほどまでの影響を与え社会を変革することができることに驚嘆する。最近、リーガルマーケットをデザインし直すといった表現が使われたりするが(昔はされていなかったように錯覚する表現が使われたりもするが)、半世紀前に久保利弁護士が変革したマーケットの規模はこれほどまでに大きい。企業法務はビジネスライクで弁護士を目指したときの志と乖離すると感じている若手弁護士も、本稿に目を通していただいているかもしれない。そんな方には特に久保利弁護士の生き様を見てほしいと思う。本連載に通底する大きなテーマである、いかなる目的観を持つかということのお手本が、まさに久保利弁護士の弁護士人生だ。本稿を書きながら魂を揺さぶられている

 次回、「法務人材の転職及び弁護士の転職へのコロナ禍による影響続編Vol.10 日比谷パーク法律事務所 代表パートナー 久保利英明氏のコメント 3/5」は明日掲載予定です。ご期待ください。

3/5は、以下URLからご覧ください。下記URLは6月21日の夜リンクが有効となります。
https://lawplatform.co.jp/booksreports/2020/06/vol1035/

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