Books & Reports

書籍とリポートについて

「法務人材の転職及び弁護士の転職へのコロナ禍による影響続編Vol.12 Zホールディングス株式会社 執行役員 法務統括部長兼ヤフー株式会社 執行役員法務統括本部長 妹尾正仁氏のコメント 前編」

REPORTS 2020.07.26

 企業法務革新基盤株式会社の代表取締役の野村でございます。弁護士・法務人材の方からご要望いただき、本年54日に『法務人材の転職及び弁護士の転職へのコロナ禍による影響』と題した記事を掲載したところ、大きな反響をいただきました。クライアントから送っていただきましたメール・DMの内容を拝見すると、興味深いご意見が多く含まれておりました。具体的には、記事に対してのご感想のみならず、ご自身のリーガルマーケットの見立てや今後の法律事務所/企業内法務の在り方といった非常に示唆に富むものでした。

 各種SNS等ではコロナ禍とリーガルマーケットに関するさまざまな意見が発信されておりますが、現在のリーガルマーケットを牽引しているリーダーたちの発信を見ることは難しいのが実態です。一方で、今回のコロナ危機は、司法試験の延期実施が決断されるなどまさに未曽有の事態であり、企業法務人材・弁護士・司法修習生・司法試験受験生としては、キャリア戦略や法務部・法律事務所の在り方について再考を迫られていることと推察されます。このような状況下では、リーガルマーケットを牽引するリーダーたちがいかなる視点で現在のコロナ禍を捉え、いかなる未来を志向しているか知ることは、平時以上に重要であるといえましょう。 

 リーガルマーケットのリーダーたちのご意見を共有することは、将来におけるリーガルマーケットの発展に寄与するものと考えます。そこで、当職からリーダーの方々との個人的DM・議論の一部を公開させて頂けないかと打診を致しましたところ、皆様からご快諾を賜りました。皆様におかれましては、心より御礼申し上げます。

 今回のシリーズで連載させて頂きますのは、法律事務所・弁護士・法務管掌役員・企業内法務部の管理職の方からの忌憚のないご意見です。豪華メンバー10名以上が非公式かつ個人的見解として述べるからこそ見えるものがあります。公式のインタビュー記事では見えない世界がそこにはあります。弁護士・法務人材の方はもちろんのこと、企業内法務部を持つすべての経営者の方にとって示唆に富んだ内容であることでしょう。ご期待ください。

 それでは、本日は、Zホールディングス株式会社 執行役員 法務統括部長兼ヤフー株式会社 執行役員法務統括本部長 妹尾正仁氏のコメントを掲載させていただきます。なお、あくまで個人の見解であり、所属組織の公式見解ではございません。

「はじめに、この度の新型コロナウイルス感染症において、お亡くなりになられた方々、およびご家族・関係者の皆様に謹んでお悔みを申し上げますとともに、罹患された皆様に心よりお見舞いを申し上げます。

 さて、『法務人材の転職及び弁護士の転職へのコロナ禍による影響』、拝読しました。このコロナ禍における弊社法務部門の状況ですが、ビジネスの拡大およびさまざまな規制対応のため、採用活動を継続しています。むしろ、会社としてコロナ禍によりインターネットを通じた情報発信や社会貢献の必要性をより強く感じているところでもあり、withコロナ時代に弊社グループの社会的責任を果たすための「構え」を作るために多くの仲間を必要としている状況です。

 またこの間、弊社としては、「民間取引先との契約手続きの「100%電子サイン化」に着手」
https://about.yahoo.co.jp/pr/release/2020/05/18a/ )を発表し、また株主がオンラインで質問や議案への投票ができる「出席型」と呼ばれるバーチャル株主総会を初めて開催させていただきました。もちろん日々の働き方も、ここ数ヶ月はフルテレワーク・フルフレックスで、一部捺印業務や株主総会準備などのために出社をせざる得ない場合を除くと、極めて高い在宅勤務率を継続している状況です。やむを得ない出社時も、子連れ出勤などが認められていますので、捺印業務などで週に1度は出社をせざるを得ない私も、株主総会のリハーサル日を含めこの間で3回小学生の子どもを連れて出社しました。

 全くのゼロから、自分の意思で生活や行動を変えることができる人というのは一握りだと思います。ましてや周囲を巻き込み、社会の賛同を得ながら会社や社会を変えることには非常に大きなパワーが必要です。ただ、さまざまな要因で社会自体が大きく変化しているとき、その流れに乗ってそれぞれが考えていた「あるべき未来」に向かって動き出すことは「備え」さえしていれば、それほど難しくないことだと思います。

 さかのぼること20194月、ヤフー株式会社の法務部門は部門の目標として「紙とハンコをなくす」を掲げ、全社的に導入が始まっていたコミュニケーションツールであるSlackを積極的に活用し、20199月には電子サインシステムの導入を完了しました。その後のコロナ禍による社会の変化はご承知のとおりですが、われわれとしては「備え」てきたことを一気に進める機会が訪れた、というだけでしたので、ここで動かないという選択肢はありませんでした。会社としても、法務部門としても、リスクを恐れずに新しい挑戦をし、社会のデジタル化に向けた提案と挑戦を続けていきたいと考えています。

 また、採用の面でも、優秀な人材を獲得するためには、
 ・会社としての持続性ある安定した利益創出と業績成長
 ・働き方の多様性の徹底した尊重
・出向などを含むノーリスクでの経験や挑戦の機会の提供

 が不可欠だと考えていましたが、コロナ禍において、これに
・未来(デジタル・クラウド・AI化)への挑戦する姿勢
が加わったと考えています。

 今後も、変化の時代、未来に挑戦できる時代に生きる幸せを感じながら、私達なりの未来を提案し、創っていきたいと考えていますので、それに賛同いただける仲間を募っていければと思います。」
(Zホールディングス株式会社 執行役員 法務統括部長兼ヤフー株式会社 執行役員法務統括本部長 妹尾正仁)

(当職野村の解説)
 Zホールディングス株式会社及びヤフー株式会社の積極的な挑戦と躍進は、読者の皆様も常にメディアで目にしていることだろう。特に近年、業界を驚かせるMAを実施してきた。

 20191113日には、Zホールディングスが、ファッション通販サイト「ZOZOTOWN」を運営するZOZOを連結子会社化した。2019930日から実施していた株式公開買付(TOB)が成立した。ZホールディングスがZOZO株式の50.1%を取得、連結子会社化している。また、20191118日にZホールディングス株式会社はLINE株式会社と経営統合基本合意書を締結し、本株式交換に係る株式交換契約締結、本会社分割に係る吸収分割契約締結を進め、統合完了に向けて現在各種手続きが進んでいるところだろう。

 Zホールディングス株式会社は、日本のIT業界を牽引する巨人だ。そのリーガル部門を指揮するのが妹尾氏だ。妹尾氏は、2009年に森・濱田松本法律事務所にアソシエイトとして入所し、その後、2012年ヤフー株式会社に転じた。ヤフーでは法務部からキャリアをスタートさせたわけではない。COO室・M&A戦略室などで経営戦略やM&Aなどに従事した。
 201510月より、同社社会貢献事業を所管し、社会貢献事業本部長としてYahoo!ネット募金やYahoo!ボランティア、Yahoo!きっずなどの社会貢献のサービスに加え、被災地支援などの社会貢献業務全般を所管した。 20184月より同社政策企画本部長を務め、渉外、いわゆるロビーイングの責任者として同社と官公庁・政策の連携も所管。さらに、コーポレートグループ 法務統括本部 法務本部長を務め、20204月に執行役員に昇格され現在に至る。キャリアスタートしたのが2009年であるから、キャリア約11年で執行役員に就任したことになる。なんと妹尾氏は、30代後半だ。本連載vol.11の三浦亮太弁護士の論稿でも記載したが、30代の過ごし方が重要であることを示唆するキャリアだ。30代にいかなる意思決定をしてきたかが、その後のキャリア人生に大きな影響を与えるということだ。インハウスとしてキャリアを歩む方のロールモデル、それが妹尾氏のキャリアだ。弁護士ならヤフーに入社したタイミングで、まず法務部と考えるのが普通だが、法務部以外からキャリアをスタートさせている。法務部でキャリアからスタートさせなかったことが、妹尾氏のキャリアの幅を広げているのではないかと推測する。本連載でもリーガルの業際をいかに打破するか、既存の枠組みをいかに超えるのか、ということが大きなテーマであるが、同様の視点で妹尾氏のキャリアを捉えることができよう。

 さて、妹尾氏との出会いに少々触れておきたいと思う。三浦法律事務所パートナー尾西祥平弁護士からのご紹介だった。尾西弁護士から「野村さん、めちゃくちゃ面白い方がいるので、一度会ってみてください。多分好きだと思いますよ。」と言われてお会いしたのがご縁の契機だ。尾西弁護士は三浦法律事務所の創業メンバーであり、渋谷オフィスを創設した人物だ。弊社創業期に尾西弁護士からキャリア相談をいただき、三浦亮太弁護士にご紹介し参画が決まった。骨があり覚悟のある弁護士だ。尾西弁護士とは価値観が近いのか、非常に馬が合い、当職は同志のような関係性だと思っている。尾西弁護士の活躍は目覚しい。前述のとおり渋谷オフィスの創設を牽引し、本年の第21回経営法友会大会 「企業法務革命 第2章 ―今、問われる法務の本質―」のセッションⅠ「機能を変える――イノベーションと法務」及びセッションⅡ「組織を変える――次世代に繋がる人材育成」でモデレータを務めるなど、活躍の場を広げている。

 尾西弁護士が尊敬しているということで、お会いしてみた。最初はモーニングをご一緒した。ファーストインプレッションは、完全に既存の弁護士の枠を逸脱しているという印象だった。あえてそうしているというよりも、弁護士という枠にこだわりも執着も感じなかった。キャリアの思考フレームが普通ではないと感じた。多くの弁護士が歩むキャリアパスとは異なるパスを歩んでこられた、そのフロンティアスピリッツに溢れていた。冒頭Zホールディングス株式会社及びヤフー株式会社の積極的な挑戦と躍進と記載したが、まさにかかる挑戦を推進する経営層を支える生き方をされていると感じた。さまざま意見交換をさせていただき、大変充実した時間を過ごさせていただいたと記憶している。その後も、尾西弁護士含めて飲みに行くなど、交流させていただいている。

 続きは、「法務人材の転職及び弁護士の転職へのコロナ禍による影響続編Vol.12 Zホールディングス株式会社 執行役員 法務統括部長兼ヤフー株式会社 執行役員法務統括本部長 妹尾正仁氏のコメント 中編」となります。

中編は、以下URLからご覧ください。以下のリンクは728日夕刻以降有効となります。
https://lawplatform.co.jp/booksreports/2020/07/vol12z_1/

======================
<本件に関するお問合せ先>
企業法務革新基盤株式会社
03-6860-4689
/営業時間:10:0018:00
e-mail:
contact@lawplatform.co.jp

<転職希望もしくはキャリア相談希望の方の登録方法>
以下のURLから登録をお願いいたします。
https://lawplatform.co.jp/agentsearch/form/

<最近の記事>
中央経済社発行「ビジネス法務」20209月号特集2「座談会 コンピテンシーモデルを軸とした考察 法務と経営を接近させるための法務人材・法務組織戦略」に代表取締役CEO野村慧が出演いたしました。https://lawplatform.co.jp/medianews/2020/07/202092ceo/

「法務人材の転職及び弁護士の転職へのコロナ禍による影響続編Vol.11 三浦法律事務所パートナー 三浦亮太弁護士のコメント 1/5
https://lawplatform.co.jp/booksreports/2020/06/vol1115/

「法務人材の転職及び弁護士の転職へのコロナ禍による影響続編Vol.10 日比谷パーク法律事務所 代表パートナー 久保利英明氏のコメント 1/5
https://lawplatform.co.jp/booksreports/2020/06/vol1015/

「法務人材の転職及び弁護士の転職へのコロナ禍による影響続編Vol.9 東京国際法律事務所 山田広毅弁護士のコメント前編」
https://lawplatform.co.jp/booksreports/2020/06/vol9/

「法務人材の転職及び弁護士の転職へのコロナ禍による影響続編Vol.8 大手企業法務部部長のコメント前編」
https://lawplatform.co.jp/booksreports/2020/06/vol8/

「【速報】令和2年司法試験の合格発表等の日程発表と司法修習生採用に対する影響について」https://lawplatform.co.jp/medianews/2020/06/post_9/

「【掲載報告】弊社のプレスリリースがメディア45社に掲載されました。」https://lawplatform.co.jp/medianews/2020/05/45/

弊社代表取締役CEO野村慧が、大手渉外法律事務所の所内研修にて講演https://lawplatform.co.jp/medianews/2020/01/ceo/

2019年 総合商社への転職者に関するご報告 市場占有率約30
https://lawplatform.co.jp/medianews/2019/12/2019/

<弊社事業のご案内>
For Legal Profession
・エージェントサービス(弁護士・法務人材) 
・顧問型キャリアデザイン
https://lawplatform.co.jp/ourservice/legalprofession/#agentsearch

For Company and Law Firm
・エージェントサービス
・エグゼクティブサーチサービス
・コンサルティングサービス
・リーガルマーケットリサーチコンサルティング
https://lawplatform.co.jp/ourservice/forcompanylawfirm/