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「法務人材の転職及び弁護士の転職へのコロナ禍による影響続編Vol.12 Zホールディングス株式会社 執行役員 法務統括部長兼ヤフー株式会社 執行役員法務統括本部長 妹尾正仁氏のコメント 中編」
前編
https://lawplatform.co.jp/booksreports/2020/07/vol12z/
さて、コメントの解説に入ろう。
「このコロナ禍における弊社法務部門の状況ですが、ビジネスの拡大およびさまざまな規制対応のため、採用活動を継続しています。」と採用活動を継続しているとのことだ。心強い言葉だ。コロナ禍であっても、ビジネスの拡大に伴い企業として対応すべき事象・規制は種々ある。巷では弁護士は多すぎて食えないなどと噂されているが、これからも弁護士はまだまだ企業に必要とされるだろう。
「むしろ、会社としてコロナ禍によりインターネットを通じた情報発信や社会貢献の必要性をより強く感じているところでもあり、withコロナ時代に弊社グループの社会的責任を果たすための「構え」を作るために多くの仲間を必要としている状況です。」業種によっては採用を縮小する企業もある中で、むしろ更に仲間が必要だと言うのだ。何故か。それはこの危機の時代に、自らの役割としてインターネットを通じた情報発信や社会貢献の必要性を見出しているから、と述べられている。自らのやるべきことがあるから、実現のために人が必要になる。そして、かかる発言の背景には、単なる営利企業としての発想を超えた企業の社会的責任を果たす視点を強く感じる。
この言葉が妹尾氏から出ているという点は興味深い。最初に述べたように、妹尾氏はヤフーおいて経営戦略などに従事したのち、社会貢献事業を経験し、執行役員に昇格された方だ。Zホールディングス及びヤフーが企業の社会的役割を十分に認識し、現場で実行してきた人材を経営層に取り入れた、ということは、社会的貢献をお題目として唱えるのではなく、むしろそのDNAを経営に積極的に取り入れる、という姿勢を強く感じさせる人事と思える。これらはZホールディングス及びヤフーが、利益最大化だけを追求する存在になるのではなく、社会が必要とする仕事を担い、次の時代にふさわしい社会を作る、という役割を自認していることを示唆している。まさに、企業は社会の公器なのだ。企業は社会に働きかけるだけの存在でも、社会から余剰価値を獲得するだけの存在でもない。社会の一員として相互に影響しあうことで共に成長していく存在でなくてはならない。
しかし、建前として企業の社会的意義・貢献を語る企業が少なくないのが現実だ。そういった会社は危機の時代には往々にして、今まで語ってきた社会的役割を放棄し、自社だけ続けば良い、という精神で行動する。平常時に引き当てれば、短期的に儲かればよい、という精神で企業のミッションを疎かにする。このような企業は社会から一方的に余剰価値を搾取する存在でしかなく、社会との連関は切れていると言えよう。とはいえ、そのような望ましくない企業が存在するのも資本主義社会の常だ。対して、長く続く企業はいつの時代でも通用するような普遍性を有するミッションを掲げ、実行する。だからこそ、いつの時代も社会に貢献し、社会から求められ、長く続いてゆく。
また、妹尾氏はPostコロナではなく「withコロナ時代」と述べる。新型コロナは短期的に収束するものではなく、長期的に付き合う必要があると考えていることが見て取れる。新型コロナが終息した後どう動くべきか、という浮足立ったことを考える前に、まず目の前にある新型コロナという時代的課題に地に足をつけて向き合い、発生する様々な問題を解決するという意思の表れであろう。
「この間、弊社としては、「民間取引先との契約手続きの「100%電子サイン化」に着手」
( https://about.yahoo.co.jp/pr/release/2020/05/18a/ )
を発表し、また株主がオンラインで質問や議案への投票ができる「出席型」と呼ばれるバーチャル株主総会を初めて開催させていただきました。」
新しい仕組みを先頭に立って取り入れ、日本社会の在り方を変革する旗手として行動する姿勢が垣間見える。コロナ禍をテコにして組織内を変革していく。外部環境の変化を内部環境に取り込み、さらに進化していく。つまり、内部環境の変化と外部環境の変化が相互に影響を与えながら変革を進めていくというストラクチャーが見える。かかる在り方は、大きな組織でもどんな小さな組織でも適用できよう。外部環境⇔内部環境 が相互に⇒で影響を与えあっているということだ。
リーガルは、外部環境の変化を内部環境に制度設計して取り込む専門家としての役割を担っていることを示している。変化のときこそ、果たすべき役割が大きくなるのがリーガルと言えるのかも知れない。
一般民事でも非日常のときに出番の多くがやってくる。非日常、変化のときこそ、リーガルが活躍する舞台が大きくなるといえるだろう。今後の世界は、さらに変化のスピードが高まる。変化が激しい時代というのは、常に非日常がそこかしこで発生しているということと同義と解される。リーガルニーズは減るどころか増え続ける時代と言えるだろう。
後編は、以下URLからご覧ください。以下のリンクは7月30日夕刻以降有効となります。
https://lawplatform.co.jp/booksreports/2020/07/vol12_2/
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