Books & Reports

書籍とリポートについて

「法務人材の転職及び弁護士の転職へのコロナ禍による影響続編Vol.12 Zホールディングス株式会社 執行役員 法務統括部長兼ヤフー株式会社 執行役員法務統括本部長 妹尾正仁氏のコメント 後編」

REPORTS 2020.07.30

前編
https://lawplatform.co.jp/booksreports/2020/07/vol12z/

中編
https://lawplatform.co.jp/booksreports/2020/07/vol12z_1/

 「もちろん日々の働き方も、ここ数ヶ月はフルテレワーク・フルフレックスで、一部捺印業務や株主総会準備などのために出社をせざる得ない場合を除くと、極めて高い在宅勤務率を継続している状況です。やむを得ない出社時も、子連れ出勤などが認められていますので、捺印業務などで週に1度は出社をせざるを得ない私も、株主総会のリハーサル日を含めこの間で3回小学生の子どもを連れて出社しました。」と、コロナ禍への対応状況を報告頂いた。この妹尾氏のエピソードからは、ヤフーが多様な働き方を認めていることがうかがえる。平時から多様な働き方を認めていたことで、コロナ禍に対しても、大きな混乱なく対応出来ている。コロナ禍が起きてから子連れ出勤に対応できるような制度・会社環境を整えようとしても、制度はともかくとしても環境を整備するのはなかなか困難だろう。そして、コロナ禍のような状況を予想して、予め適切な対策を取っておくことも難しい。すると、多様な選択肢を用意することは、何が起きるかわからない危機の時代においては大きな強みを発揮するのではないか。そう考えれば、平時からの多様性の維持は、危機の時代における組織構築のコンピテンシーとなるかもしれない。

 「その流れに乗ってそれぞれが考えていた「あるべき未来」に向かって動き出すことは「備え」さえしていれば、それほど難しくないことだと思います。」と、「備え」さえあれば、大きな変革の流れに乗って「あるべき未来」へ進むことはそれほど難しくないと語る。この指摘は、平常時から「備え」を怠らなかった者こそが言える至言だろう。「備え」さえあれば...と言うが、はたして平常時から「あるべき未来」へ向かうための「備え」を出来る人がどれほどおり、実際に「備え」ることがどれほど困難なことか。多くの人は、日々の業務に忙殺され、目の前の課題に一杯一杯になって、未来どころではなくなっているだろう。あるいは、現在の利益の最大化を目指すばかりで、未来のための備えを無駄なリソースとして切り捨ててしまっているかもしれない。不確実な未来のために今、何かを準備する。もちろん、予想が外れ、備えが無駄になるかもしれない。その恐怖、不確実性に耐え、着々と「備え」を進めてきたことには脱帽するしかない。このことは、日々の業務に取り組む中でも、近視眼的思考に嵌らずに大局的視点を持ち続け、その下に行動し続けることがいかに重要かを示している。

 具体的には、「20194月、ヤフー株式会社の法務部門は部門の目標として『紙とハンコをなくす』を掲げ」、「20199月には電子サインシステムの導入を完了」したという。現在利益となっているか、といった「現在」の時間軸だけで現在の業務を評価するのではなく、未来という時間軸で以て、これからの時代に必要なコンピテンシーから逆算して今の業務を変えることが出来ていたのだ。だからこそ、この未曽有の危機に対しても「『備え』てきたことを一気に進める機会が訪れた、というだけ」であり、「ここで動かないという選択肢は」ない、とばかりに一気呵成にすべきことを実行できたのだろう。

 「会社としても、法務部門としても、リスクを恐れずに新しい挑戦をし、社会のデジタル化に向けた提案と挑戦を続けていきたいと考えています。」と、未来への意思を示された。これからも、会社・法務部門のどちらにおいても、社会のデジタル化という未来に向けて、リスクを恐れず変革を起こし続けることを宣言されており、非常に頼もしい。さらなる発展を期待する。

 「また、採用の面でも」、と話は採用に移る。優秀な人材を獲得するために企業に求められる要件として、

・会社としての持続性ある安定した利益創出と業績成長
・働き方の多様性の徹底した尊重
・出向などを含むノーリスクでの経験や挑戦の機会の提供
の3つに加え、

「未来(デジタル・クラウド・AI化)への挑戦する姿勢」

が加わったと妹尾氏は指摘する。従来の3要件が企業から構成員に対する姿勢であったのに対し、新要素は企業から社会に対する姿勢という点で決定的に異なる。それではなぜこのような要件が必要になったのだろうか。

 当職がみるに、コロナ禍により、我々は未来の不確実性、社会の変化の速さを決定的に痛感した。将来について強い関心を持つ若者ならその実感は尚更のものであろう。すると彼らにとって、変わっていく時代に対して変化しようとしない企業は安定していると評価されるよりも、むしろリスクと捉えられるようになったのではないか。そして企業側としては、積極的にリスクを取りに行き、未来を変革する意思を見せていかなければ、優秀な若者はついてきてくれないと感じたのではないか。つまりは、企業が未来に挑戦し続ける覚悟を決める必要がある、ということではないかと当職は推察する。

 最後に、「今後も、変化の時代、未来に挑戦できる時代に生きる幸せを感じながら、私達なりの未来を提案し、創っていきたいと考えていますので、それに賛同いただける仲間を募っていければと思います。」と結ぶ。

 変化の時代は、通常の感覚であれば、これからどうなるか分からない怖い時代であり、未来について否が応でも考えなければならない時代として記述されるものだが、妹尾氏はこれを未来に挑戦「できる」時代と積極的に捉え、それどころか、その時代に生きることを「幸せ」と表現している。これは妹尾氏が不確実性を受容し、楽しむことができる人材であることを示している。そして実際妹尾氏はお会いすると現実を楽しんでいるように見える。この変化の時代はまさに妹尾氏にピッタリの時代のようだ。今後のご活躍から目を離せない。
------------------------------------------------------------------
今回で、本連載の登壇者の方は最後となります。実に12回、2か月にも及ぶ連載にお付き合いただき、ありがとうございました。総括編として、今回の連載を横くしで整理した論考を後日掲載させていただきますので、ご期待ください。

==============================
<本件に関するお問合せ先>
企業法務革新基盤株式会社
03-6860-4689
/営業時間:10:0018:00
e-mail:
contact@lawplatform.co.jp

<転職希望もしくはキャリア相談希望の方の登録方法>
以下のURLから登録をお願いいたします。
https://lawplatform.co.jp/agentsearch/form/

<最近の記事>
中央経済社発行「ビジネス法務」20209月号特集2「座談会 コンピテンシーモデルを軸とした考察 法務と経営を接近させるための法務人材・法務組織戦略」に代表取締役CEO野村慧が出演いたしました。https://lawplatform.co.jp/medianews/2020/07/202092ceo/

経営法友会編『新型コロナ危機下の企業法務部門』(商事法務、2020624)に掲載された論考に弊社代表取締役CEO野村慧が協力いたしました。
https://lawplatform.co.jp/medianews/2020/07/2020624ceo/

「法務人材の転職及び弁護士の転職へのコロナ禍による影響続編Vol.11 三浦法律事務所パートナー 三浦亮太弁護士のコメント 1/5
https://lawplatform.co.jp/booksreports/2020/06/vol1115/

「法務人材の転職及び弁護士の転職へのコロナ禍による影響続編Vol.10 日比谷パーク法律事務所 代表パートナー 久保利英明氏のコメント 1/5
https://lawplatform.co.jp/booksreports/2020/06/vol1015/

「法務人材の転職及び弁護士の転職へのコロナ禍による影響続編Vol.9 東京国際法律事務所 山田広毅弁護士のコメント前編」
https://lawplatform.co.jp/booksreports/2020/06/vol9/

「法務人材の転職及び弁護士の転職へのコロナ禍による影響続編Vol.8 大手企業法務部部長のコメント前編」https://lawplatform.co.jp/booksreports/2020/06/vol8/

「【速報】令和2年司法試験の合格発表等の日程発表と司法修習生採用に対する影響について」https://lawplatform.co.jp/medianews/2020/06/post_9/

「【掲載報告】弊社のプレスリリースがメディア45社に掲載されました。」https://lawplatform.co.jp/medianews/2020/05/45/

弊社代表取締役CEO野村慧が、大手渉外法律事務所の所内研修にて講演https://lawplatform.co.jp/medianews/2020/01/ceo/

2019年 総合商社への転職者に関するご報告 市場占有率約30
https://lawplatform.co.jp/medianews/2019/12/2019/

<弊社事業のご案内>
For Legal Profession
・エージェントサービス(弁護士・法務人材) 
・顧問型キャリアデザイン
https://lawplatform.co.jp/ourservice/legalprofession/#agentsearch

For Company and Law Firm
・エージェントサービス
・エグゼクティブサーチサービス
・コンサルティングサービス
・リーガルマーケットリサーチコンサルティング
https://lawplatform.co.jp/ourservice/forcompanylawfirm/